第3話
「おっはよー」
その声と同時にクラスの空気が明るくなるのを感じる。茶髪で小柄な男が遅刻してきた様子だった。
なんとなく眺めているとバチっと目が合ってしまう。
「え、だれだれ?あの金髪の子!転校生?」
教室中に声を響かせながらドタバタこっちに来る。勢いよくバッグを投げ捨てて、椅子を引きずってきて、僕の目の前に座る。
やたらと、距離が近い。
「初めまして!俺、珠樹!今井珠樹!よろしくな」
満面の笑みと唐突な自己紹介に驚いてしまう。
「......よろしく」
「そんなに怪しまなくたって取って食ったりなんかしないよ。」
こんな奴は初めて見た。
だれ一人だって至峰学園の制服を隠すことはしないのに今井は制服の上からパーカーを着て誇り高き校章を隠してしまっている。
着崩すことは禁止ではないが、日本トップの高校として自信を持っている至峰学園の生徒にとって制服は一番の証明であるはずなのに。
「名前、教えてよ。」
勢いに飲まれて自分が名乗ることを忘れていた。
「園和紙光だ」
「園和紙?なんかすっごい名前だね。光ちゃん?光くん?」
「僕は男だ」
男らしさが皆無な見た目から女性と間違われることは少なくないが、僕と同じような体格の今井に言われるのは少しだけ不愉快だ。
「へえー。光くんの髪の毛って地毛?きれーだね」
今井の手が僕の髪に触れる。
「触るな」
手を跳ね除ける。
「ちぇ、けちー。ねー、なんでさ、この時期に転校してきたの?」
少し間をおいて答える。
「......なぜそんなことを聞くんだ?」
「んー、だってさ、だってさ、わざわざこの妖怪学級に転校してくるなんてさ、変わってるなぁって思って」
「妖怪学級?」
「え、知らないの?このクラスの呼び名だよ?」
「なんの話だ」
妖怪学級なんて初耳だ。
確かに他のクラスと校舎が違っていて少し古臭いけれど幽霊が出そうなんてことは全くない。
「うわぁ、それ知らずにこんなところに来ちゃったんだね。...仕方ないから僕が教えてあげる。ここ、至峰学園が異能力のタイプごとにA組から5つのクラスに分かれてるのは知ってるでしょ?」
「そのくらい知ってるに決まってるだろう?なぜそれがこの話に関係ある?」
今井は苦笑いをしながら説明を続ける。
「あのね、ここはD組。つまり、特殊能力系の人間が集まるクラスってこと。」
「......だからなんだ?」
僕の察しの悪さに呆れているのか今井の顔が曇ってくるのがわかる。
「だから、"妖怪学級"って呼ばれてるんだよ」
「妖怪?」
特殊能力系のクラスであることと妖怪学級という呼び名に繋がりなんてさっぱり想像できない。
「なーんで、わかんないかなぁ。特殊能力系の人間は最底辺!妖怪みたいに化けるしかできない能無し。それは、それだけは、至峰学園でも変わらない。」
今井の顔が何かを堪えるかのように歪むのがわかる。これ以上に話を掘り下げるのは彼にとって不快だろう。
「......そうか、説明感謝する。」
その一言で今井はパァッと元の陽気な顔に戻り、キラキラとした目でまた話をし始める。
......至峰学園にそんなふうに言われる場所があるとは知らなかった。
だけど、僕はなぜ父さんが僕をここに転校するように指示したのか。これは偶然なのか?いや、父さんは考えなしに僕に命令することはない。
そんなことばかりがグルグルと頭を回っていた。
妖怪学級D組!!〜妖怪程度でも異能力至上主義をぶっ壊す〜 真原 結花 @mayu1130
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