第10章|新しい門出(前編)

朝の光が校庭に差し込み、桜の花びらが風に舞っている。

陽菜は制服姿で校門をくぐり、深呼吸をする。胸の奥には、卒業への期待と少しの寂しさが混ざる。


「いよいよ、今日か……」

小さくつぶやき、手元の書類やバッグを確認する。遠くから聞こえる友人たちの笑い声に、胸がぎゅっとなる。


海翔も校門の前で立ち止まり、深呼吸をする。

「みんな、それぞれの道を歩くんだな……」

少し緊張しながらも、昨日の再会の約束が心を支えている。陽菜のことを思い浮かべ、自然に笑みがこぼれた。


莉奈は少し離れたところで、バッグを肩に掛けている。

「新しい生活、頑張ろう」

静かにそうつぶやき、周囲の友人たちと目を合わせて小さく笑う。進路は違っても、友情は変わらないことを実感していた。


蓮は図書館帰りの道を歩きながら、桜の花びらに目を向ける。

「これからも、自分のペースで頑張ろう」

冷静な表情の中に、胸の奥の小さな熱を感じる。友情も恋も、大切なものは変わらずここにある。


奏は朝の光の中、公園のベンチで深呼吸をしている。

「今日から新しい一歩……怖いけど、楽しみだ」

桜の花びらが風に舞い、肩に触れるたびに心が軽くなる。


校庭の中央で、五人は自然と顔を合わせた。互いに微笑み、歩み寄る。

「みんな……元気そうだね」

陽菜の声に、笑顔が返ってくる。遠く離れても、共に過ごした日々の絆は変わらない。


「うん、頑張ろうね」

海翔の声が力強く響く。胸の奥で芽生えた想いが、今日という日の一歩を支えてくれる。


桜の花びらが舞う中、五人は肩を並べて歩き出す。

未来はまだ見えないけれど、心には確かな希望と、互いへの信頼がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る