第8章|伝えたい言葉(後編)

中庭のベンチに座る二人の間には、桜の花びらが静かに舞う。

陽菜は深呼吸をして、胸の奥の想いを整理する。言葉にしたい――でも、怖くて声にできない。


「海翔……私、ずっと思ってたんだ」

声は震えているが、真剣さがこもる。海翔はじっと目を見開き、呼吸を整える。


「陽菜……俺も、同じ気持ちだった」

低く、でも確かな声。胸の奥が熱くなり、涙が滲む。二人は互いに見つめ合い、言葉が心に届く瞬間を感じる。


「怖くて、言えなかった……」

陽菜の声がかすかに震える。

「俺もだ……でも、もう隠さない」

海翔の手が陽菜の手に触れ、温かさが伝わる。


花びらが風に舞い、肩に触れるたびに、胸のざわつきが少しずつ穏やかになる。

「これからは……ちゃんと伝える」

陽菜が小さくつぶやき、海翔も頷く。沈黙の時間は長かったけれど、今、互いの心は確かに通じ合った。


「これからも、よろしくね」

「うん、ずっと一緒だよ」


笑顔がこぼれ、涙をぬぐいながらも、胸の奥には温かさが広がる。

桜の花びらが二人の肩に落ち、光の中でゆらめく。

遠く離れていた時間も、言葉にできなかった日々も、すべてが今のこの瞬間を支えている。


夕暮れの光が二人を包み、未来への一歩が確かに見えた。

「怖くても、前に進めるんだ……」

胸に芽生えた確かな想いが、歩む力になる。

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