第7章|朝焼けの決断(後編)
陽菜はバッグを肩にかけ、大学のオリエンテーション会場へ向かうため駅へと歩き出した。
朝焼けの空は、まだ淡いピンク色で、道の両側の街路樹に柔らかく反射している。胸の奥には緊張があるけれど、昨日の夜に誓った決意が、歩幅をしっかりと支えてくれる。
駅前で、偶然海翔とすれ違った。互いにぎこちなく笑いながら、自然に歩調を合わせる。
「おはよう、陽菜」
「おはよう、海翔」
短い挨拶でも、心の距離は少し縮まった気がした。
「今日、頑張ろうな」
海翔の声にはわずかに緊張が混ざる。陽菜は頷き、小さく微笑む。
「うん、頑張ろう」
電車の中、陽菜は窓の外に流れる景色を見ながら、胸の中で昨夜の言葉を反芻する。言えなかった不安も、すれ違った想いも、今は小さな勇気に変わっている。
「怖くても、踏み出すんだ」
そう自分に言い聞かせ、手を握る。
海翔もまた、自転車で通学路を走りながら、昨日の夜の会話を思い出していた。
「陽菜のこと、ちゃんと支えたい」
小さな決意が胸に芽生え、少し笑顔が戻る。
昼になり、莉奈はアルバイト先で忙しく立ち回る。
「やっぱり、新しい環境でも頑張ろう」
心の中でそうつぶやき、笑顔を作る。昨日の夜の約束と友情の重みが、背中を押してくれる。
蓮は図書館で調べものをしていた。静かにページをめくりながらも、胸の奥には未来への覚悟がある。
「誰と比べる必要もない、自分の道を行くんだ」
自分に言い聞かせ、指先に力を込める。
夕方、奏は公園で桜の花びらを見上げていた。朝の不安や迷いが、少しずつ希望に変わっていく。
「大丈夫、私も頑張れる」
小さくつぶやき、歩き出す。
陽菜も駅前で立ち止まり、オレンジ色の夕日を見上げる。
「怖くても……未来に進もう」
胸に芽生えた希望が、確かに自分の歩幅を支えていた。朝焼けの決断は、今日という一日を力強く照らす光となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます