第6章|夜の桜並木(後編)
桜並木の下で、風に舞う花びらが二人の間にふわりと落ちた。
陽菜は深く息を吸い込み、胸の奥に押し込めていた想いを少しずつ言葉にする。
「海翔……私、ずっと言いたかったことがある」
声は震えているけれど、揺るがない決意を含んでいた。海翔は目を見開き、黙ってうなずく。
「陽菜……俺も、ずっと言いたかった」
言葉が出るまでの沈黙は長く、胸の奥を締め付ける。だけど、今、互いの気持ちを確かめるための時間だ。
二人の間で言葉が交わされるたび、肩の力が少しずつ抜け、胸の奥の重みが軽くなっていく。涙がこぼれそうになり、陽菜はハンカチでそっと目元を押さえる。
「こんなに……みんなに会えなくなるの、寂しいよね」
莉奈の声が、小さな吐息のように混じる。蓮も静かに頷き、奏は微笑みながら目を細めた。
「でも……こうして一緒にいる時間があるだけで、幸せだ」
陽菜の言葉に、海翔も小さく微笑む。言葉にしなくても、互いの心が通じ合っていることを確かめる。
夜風が桜の花びらを揺らし、淡い光に照らされた並木道は幻想的に輝く。
「ねえ、約束しよう。これからも、それぞれの道で頑張ること」
莉奈が声を弾ませ、全員の視線が自然と集まる。
「うん、絶対に」
海翔、蓮、奏、陽菜――小さく頷き合うその瞬間、言葉にできなかった不安も、すれ違いの痛みも、桜の光に溶けていった。
桜色の夜風に包まれ、五人は互いに微笑む。
「大丈夫……これからも、みんなのこと、忘れない」
陽菜のつぶやきが、静かに夜空に溶けていく。涙を拭いながらも、胸の奥には温かさが広がった。
その夜、桜並木の光の下で、五人の心は確かに繋がっていた。
未来への一歩はまだ不安だけれど、共に歩んだ日々の絆が、静かに勇気をくれる。
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