第4章|それぞれの進路(前編)
春休みの陽射しが、街路樹の葉を柔らかく照らしていた。
陽菜はリビングの机に向かい、大学の願書を前に書類を整理する。心は浮つきながらも、どこか緊張に包まれていた。
「本当に、これでいいのかな……」
つぶやきながら、ペンを握る手に力が入る。期待と不安が入り混じり、胸の奥がざわつく。
その頃、海翔は駅前のカフェでアルバイトの面接の結果を待っていた。
「大学もいいけど、俺は地元でしばらく頑張ろうかな」
小さな声で独り言をつぶやく。周りの喧騒が、かえって孤独感を際立たせる。幼なじみの陽菜と離れる現実が、心に重くのしかかる。
一方、莉奈は部屋の窓際に座り、将来の夢についてノートに書き出していた。
「どこに行くかより、私らしくいられる場所を選びたい」
そう思いながらも、胸の奥には小さな焦りがあった。仲間と離れることへの不安と、まだ見ぬ未来への期待が混ざり合う。
蓮は図書館で資料を広げ、静かに進路を考えていた。
「人と違う道を選ぶのは怖い。でも、自分のペースを守りたい」
冷静に見える彼の表情には、誰にも言えない迷いが隠れていた。
時折、スマホの画面に目を落とす。そこには昨日、陽菜から届いた桜の写真。心の中に温かさが広がる。
奏は実家で、家族と進路について話していた。
「大学に行くべきか、すぐに働くべきか……」
家族の期待と、自分の気持ちの間で揺れる。外の桜の景色が、未来への決断を焦らせるように感じられた。
夕方、陽菜は海翔に電話をかけた。
「ねえ、海翔……進路、もう決めた?」
声の向こうで、少しの間、沈黙が流れる。
「うん……まだ完全じゃないけど、地元で仕事を探そうかなって思ってる」
聞こえる声に、陽菜の胸が少しだけ温かくなる。同時に、離れる距離を実感して切なさがこみ上げる。
「陽菜は?」
「私は……大学に行くよ。まだ不安だけど、楽しみでもある」
互いに声を交換するだけで、言葉以上に気持ちが伝わる。沈黙の後、海翔は小さく笑った。
「そっか……頑張ろうな」
「うん、頑張ろう」
電話を切った後、陽菜は深呼吸をする。未来はまだ見えないけれど、踏み出す覚悟が少しだけ固まった。
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