第2話 救出
体が光った後、村の端っこの小屋から見ていく。騒ぎが起きても、端なら敵が到達するまで時間が稼げるだろうからな。
寝ていたゴブリンは首を掻き切って胸を刺す。
絶命したことを確認して、次へ向かう。
次の所には二人いて、飯を食っていた。後ろから二人の喉を潰して声を上げられないようにする。その上で、胸を刺して絶命させる。
「ふぅ。結構な数いるのかもなぁ」
まぁ、この程度の戦闘力ならなんら問題はない。いくらでも殲滅できる。次々とゴブリンを駆逐していってのだが、騒ぎが起きた。
「おい! 次の見張りが死んでる! 侵入者だ!」
俺は外をキョロキョロしながら「侵入者だぁ!」と叫んで周りのゴブリンと一体化する。これでは誰がやったかはわからないだろう。
そこまでこいつらが賢いとも思えないし。
「今からお楽しみなのにぃ! くっそぉ!」
汚い顔をしたゴブリンが怒りの声を上げている。どうせいなくなるんだから放っておこう。さて、隠密に行動するには、一旦隠れないとな。
他のゴブリンと一緒に騒いでみる。そして、隙を見て長の家の影に隠れる。こんなに騒いでいる中、長の家は慌てることなく、女を連れ込んでいる。
一応、ゴブリンにも女はいた。けど、みんな長の家で奉仕しているようなのだ。そんなゴブ生を終わらせてやりたい。
門番がキョロキョロしている隙に、入口から中へと押し入る。
「おさ! 侵入者ですよ!」
「わぁっておる。適当に討伐しろ!」
「わかりました」
返事をしたゴブリンが長だとわかったので、肉薄して喉を掻き切って胸を刺して絶命。
「ちょっと! あんたなにしてんの⁉」
騒ぎだした女ゴブリンは、みんな首をへし折って絶命させた。どうせ魔物だ。何の感情も沸かない。これが精神強化の影響だろうか。
入口の横へと体を張り付けて潜む。
女ゴブリンの声を聞いて表から中へ勢いよく入って来たホブゴブリンが家を見渡す。中の惨状を見て騒ぎだした。
「くっそ! 侵入者め! どこへいった!」
「ここだよぉ」
首を掻き切る。だが、後ろへの裏拳を放ってきたので、仰け反って避ける。ホブゴブリンはなかなか固いようだ。
放ってきた勢いでこちらを向くホブゴブリンだったが、同じように俺も裏へと回る。そして、また後ろを取る。
このナイフでは首が切れないようなので、ナイフを後ろから胸へと突き立てる。
「がぁぁ! くそがっ!」
また後ろへ裏拳を放ってきたので、合わせて一緒に回り込み、突き立てたナイフを殴って中へとねじ込んでいく。
「ぐふっ!」
血を吐きながら倒れるホブゴブリン。
「おい! 何が起きてる⁉」
入って来たのは、もう一人の門番のホブゴブリンだった。俺はここまでで身体が四回光っている。どれほど光ればいいのかわからないけど、身体に力が漲ってきているのは間違いない。
狼狽えているホブゴブリンへと突進して、喉へナイフを突き立てようとした。だが、ナイフを掴まれる。まぁ、俺は素手も得意だけどね。面倒なだけで。
ナイフから手を放して、横へ位置取り一回り大きなゴブリンの足裏を蹴り飛ばす。膝をついて前屈みになった。そこを狙って鼻っ柱へ思いっきり膝を入れる。
「がぁぁぁ!」
鼻を抑えてもがいているところに落ちていたナイフを拾い、後ろから胸を一突きする。力が上がったからだろうか。あまり苦も無くナイフは奥へと入って行く。
ホブゴブリンは胸からとめどなく血を流して力を失い、倒れた。耳を澄ませると、もう物音はしなくなっていた。
突如、身体が眩い輝きを放ち。目の前にディスプレイのようなものが現れた。
【進化条件を満たしました。進化先を選んでください。】
【>大鬼(ホブゴブリン) >餓鬼(ガキ) >屍鬼(しき)】
「いやいや、どれがイケメンになるんだろう?」
モテだけを考えると、屍鬼なんかはもしかしたらシュッとするかもしれない。餓鬼は悪そうな顔になりそうだなぁ。
「えっ。これ、説明なし? んー。じゃあ、一応安パイで大鬼(ホブゴブリン)にしよう! 悪化しないはず!」
意を決してホブゴブリンをタップする。体が熱くなり、頭も痛くなってくる。
あついあついあつい!
やばいこれ!
「ぬあぁぁぁ」
気が付くと床へ横になっていた。
再び液晶が出現する。
【称号『村の主』を手に入れました】
「どんな効果だよ! 村なんてちいせい規模の称号!」
言っていてもしょうがないから、女の子を助けるか。村の真ん中に捕らえられている女の所へ行くと、鎧を脱がされて胸がはだけて、下半身もほぼ露出している状態だった。
「いや! 助けてぇ!」
俺を見るなり逃げようとする。そりゃそうだ。さっきまで襲っていた奴と同じ格好なんだから。助けに来たと思う方がどうかしている。
「話を聞いてくれ」
「えっ? 言葉を話せるの?」
「そうだ。俺は他のゴブリンとは違う」
カッコいいってなるかな?
惚れたぁってなるかな?
「そう。珍しい種類なのね。でも、見た目はただの不細工なホブゴブリンね」
「くっ!」
神様、なぜ俺をイケメンにしてくれないのですか??
「まぁ、でも助けてくれるなら従うわ」
「これを着てくれ。目のやり場に困る」
ローブを渡すと匂いを嗅いでしかめっ面をしながらそれを羽織った。
「言うことは、イケメンっぽいわね」
「ぽいわ余計だ! 行くぞ!」
女の子を連れ立って村を出る。
俺は森の中はどっちに進んでいいかわからん。
「帰り道わかるか?」
「分かるわけないでしょ?」
詰んだじゃん。
どうしよ。
「古典的に、狼煙でもあげるか」
「ノロシ?」
「この村、燃やそう。誰か来るだろ」
村にあった火打石を使い、ボロボロの小屋に次々と火を放つ。
焼ける匂いと共に白い煙が立ち上がっていく空を眺めていた。
「何カッコつけてんの?」
「べっ、別にいいだろ!」
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