第045話:【活動報告】リソース管理は正常化されました

 カステル砦攻防戦の終結から数日。  俺は執務室の片隅で、今回の戦域における「最終的なログ」を報告書にまとめていた。  魔導盤(コンソール)の画面に浮かぶ無機質な数字を、この世界の住人が理解できる形式へと翻訳していく作業だ。


■ カステル砦周辺:戦域稼働状況報告書

【ステータス】:


外部からの不正アクセス(死霊の軍勢):完全遮断(SHUTDOWN)


実行ユニット「ジル・ド・レ」:消滅(RELEASED)


召喚ポート(運河の歪み):物理的閉塞により無効化


【リソース被害状況】:


砦外壁:約20%損壊(現在、復旧パッチ適用中。主要構造に異常なし)


騎士団生存率:88%(ハメ技による遅延工作が功を奏し、次期戦力の維持は可能)


住民避難状況:全プロセス完了。一部帰宅を開始。


【回収された重要資産】:


不審な黒い魔導書(詳細解析待ち)


ゼニス公国兵の装備品(データのサンプルとして保管)


「……よし。生存率は九割弱。あの物量を相手に、よくこれだけの資産(命)を残せたな」


 俺はペンを置き、凝り固まった肩を回した。  砦は今、アリサの指揮のもとで驚異的な速度で機能回復が進んでいる。  あの絶望的な包囲戦を生き抜いた騎士たちは、以前よりも規律正しく、かつ柔軟に動くようになった。システムの脆弱性を一度克服したことで、組織というプログラムが一段階上のバージョンへとアップデートされた証拠だろう。


 だが、俺の懐にある「黒い魔導書」からは、依然として微弱なノイズが漏れ続けている。  解析を進めるほどに、この世界に埋め込まれた「古いバグ」の正体が見えてくる。ブラッドハート家の血筋に隠された秘密、そして公国を飲み込んだ、救いなき再構築(リビルド)の意思。


 窓の外では、復興作業に当たる人々の活気ある声が響いている。  この安らぎを維持するためには、次にこちらから「敵の本丸」へアクセスを試みる必要があるだろう。



[SYSTEM] SESSION END.

[NEXT] PHASE 04: "ZENITH DEADLOCK CRISIS"

[STATUS] WAITING FOR BOOT...



「……さて。今回の超過勤務(オーバーワーク)の手当は、アリサ様に淹れてもらう『ブラッド・ティー』で手を打つとしますか」


 鮮やかな真紅に透き通るそのお茶は、侍女が用意するものより少しだけ甘みが強い。それが俺というシステムを冷却するのに、今のところ最も効率が良い燃料(エネルギー)だと気づいていた。


 俺は魔導盤を叩き、次の戦域――「ゼニス公国」のマップデータをロードし始めた




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