IT運用監視員の異世界保守日誌 〜月一の帰社日に絶命した俺、現場の知恵で吸血鬼のバグ(権能)を無効化する。エリートお嬢様、その結界は既に穴だらけですよ?〜
第038話:レインの策。地形を利用した『ハメ技』誘導
第038話:レインの策。地形を利用した『ハメ技』誘導
巨大キメラが、地響きと共に砦の南側へとその巨躯を滑らせる。 同時に、西の『静寂の古森』からも、ジル・ド・レがバックドアから流し込んだ死霊の増援が溢れ出し、運河の淵へと殺到していた。
「レイン、挟み撃ちよ! 北からはあの化け物、西からはゾンビの群れ……逃げ場がないわ!」
アリサの悲鳴に、俺は魔導盤のエンターキーを叩いて応じる。
「いや。――『入り口』が二つなら、まとめて一箇所に『ダンプ』すればいい」
俺の前方には、旧運河跡。 北から滑り込むキメラと、西から合流するゾンビの群れ。その移動ベクトルが交差する一点。 俺は、輸送兵が乗り捨てた荷馬車の荷台を蹴り、運河の淵ギリギリで地面に転がり込んだ。
「重力定数、正常化。スタック判定、オン! ――全パケット、ゴミ箱(溝)へ落ちろ!」
――ズ、ズゥゥゥゥゥン!!
空中で不自然に浮遊していたキメラの巨躯が、本来の質量を取り戻して運河の底へ落下する。 そして、西の森から勢いよく飛び出してきたゾンビの群れが、落下中のキメラの肉の隙間へと「割り込む」形で次々と重なり合っていく。
「な……が、がは……っ!? 貴様、何をしたぁぁ!」
キメラの頭頂部、重なり合った肉の「多重衝突(コリジョン・エラー)」に巻き込まれたジル・ド・レが、絶叫を上げた。 狭いV字型の運河底。巨大な肉塊と、数千のゾンビ。 それらが物理的に「めり込み合った」状態で固定され、もはや指一本動かせない。
「……動かない? 嘘、あんな化け物が、ただの溝に落ちただけで?」
「ただ落ちただけじゃありませんよ。あいつの身体は数千の死体が『雑に重なり合って』できている。あんな狭い場所で、壁の石材と自分の肉が複雑に衝突し合った(スタックした)状態で落下衝撃を受けたんだ。……今、あいつの内部では、数万箇所の『座標重複エラー』が無限ループしていますよ」
一度スタック(固定)した巨大な不正オブジェクトは、もはや自分の意志で脱出することは不可能だ。
「さあ、お嬢様。……動けないターゲットの処理(デバッグ)ほど、簡単な仕事はありませんよ」
俺は運河の底で喘ぐキメラを見下ろし、魔導盤の画面に、現在の戦域トポロジーを更新して表示させた。
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[中央:ゲートウェイ]
[■]:カステル砦
|
|[誘導成功:物理干渉発生中]
↓
[西:サブノード] =[▼旧運河跡]=[東:ストレージ]
[△]:静寂の古森 =[(現在地:スタック)]=[#]:農地
(召喚陣封鎖~) (強制フリーズ中) (リソース保護)
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キメラをハメ込んだ今、いよいよ次のフェーズ――供給元の完全封鎖へと移行する。
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