余談一 お~いお茶新俳句大賞

一応去年から行きますか。


元カレに花橘を投げつける

慰霊碑に羽の崩れた蝶の群れ

春雨や一時間後のバスを待つ

暗涙で燐寸を消せるほどの恋

片時雨繋がれていたいつかの手

春驟雨傘を忘れた手に染みる


こんなことをすると一句ずつ振り返りたくなりますね。


まずは一句目、元カレに花橘を投げつける、これは完全なネタなのですがわりとこだわりもあります。花橘は和歌で、亡き人や恋人を思い出す象徴として扱われますね。『五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする』という伊勢物語や古今和歌集に収録されている詠み人知らずの句が有名だと思います。五月を待って咲く花橘の香りは、あの人の袖の香りを思い出させるなあという意味(だいぶラフ)になります。私の俳句に戻りますと、それを投げつけるのですから、まあ恐らくてめえのことなんか思い出すかよクソが、と思ったのでしょうね(私に彼氏なんてもの、いたことないのですが)。


二句目は、慰霊碑に羽の崩れた蝶の群れ、です。今見返してみると、なんとも散文的であるなと思います。要はあんまりよくない。今ならどうするでしょう。羽崩れた蝶や慰霊碑に落つる、でしょうか。ただ、こうしたところでいいかと言われると、情景自体が何を言ってるんだという感じではあるのですが。たしか、蝶を交配させるときに羽をもぐ的な話があって(今調べたらそんな事実は見つけられなかった。どこで見たんだろう)それを受けて、羽の崩れた蝶が慰霊碑に群がっている、と詠んだのだと思う。誰が分かるか、と思う。


三句目は、春雨や一時間後のバスを待つ。私これ好きなんですよね。春雨、細やかに降り続く雨の中バスを一人待っている。その孤独感と、春雨の優しさが絡まり合って良い句になっていると思います(自分で言うことではないが、このままでは一生日の目を浴びないままに葬り去られてしまう)。一時間、私はギリギリ待てるような気がするんですよね。小説か、詩集でもあれば、なんだかんださっと過ぎていってしまう時間の単位のような気がする。静かな世界が私は好きなのだが、皆さんはどうだろうか。


四句目は、暗涙で燐寸を消せるほどの恋。まあ、何を言ってるのかは分かるし、それでいて別に面白くもなんともない在り来りな句であるような気がします。しかも季語がない。新俳句大賞であるため必ずしも季語を入れる必要もないのですが、やはり今見直してみると反省点ですね。灯火は涙で消えた冬の星。やっぱり、どうにも調理しきれない。


五句目は、片時雨繋がれていたいつかの手。片時雨とは空の一方では時雨が降っているのに、もう一方では晴れ間が見えるような局地的な天候を表す冬の季語です。それに、手を繋いでいたいつかの二人を重ね合わせました。きっと、あの日の二人の心はまったく逆の様相を呈していて、それ故に交わることがなかったのだと。そんな物語を夢想してみました。


六句目は、春驟雨傘を忘れた手に染みる。春驟雨とは突然降り出す、一時的な強いにわか雨を表す春の季語です。傘をもっていなかった手に、冷たい雨が手に染みている。惨めさもあり、諦めもあり、笑いがこぼれるような気さえする。そんな春の日常を詠ってみました。


こう見ると、雨が多くてバランスが悪いなと思います。全体的に、良い句が集まっているとかでもなく。本当に反省の多い俳句たちであったと思います。


来年の話なのですが、今年は学校でこの俳句たちは出したのです。そして来年、よし個人で出そうと思い立ち、俳句を出してみたら、今年もまさかの宿題として出されてしまい、先生からお叱りを受けました。教科担当と、俳句大賞を学校でまとめている先生に。いやはや、悪いことをいた覚えはないのですが、謝りに行きましたね。来年こそは、きっと宿題は出ないと思うので、個人で出そうと思います。

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