第3話「輝くだけのスキル?」③

 3本のワイヤーが、船の底に開いたデッキへ家族を押し込んだのを見た。

 あのワイヤーで捕獲しているようだ。


 家族が無残にも奪われたことを実感すると、みるみる内に全身の血の気が引いた。

 抵抗する暇もなかった。

 守ると誓ったのに、あの誓いがあっという間に脆くも消え去ったんだ。


 俺は……なんて無力なんだ。

 どうして、何もできなかった。


 動揺と、いいようのない喪失感が、全身の熱を奪い、俺の体を石のように固まらせた。

 空を見上げる。あの船へ向かって、今すぐ飛び込みたかった。


 愕然とする俺の側にミサイルが追突。

 俺は爆風と共に地面を何回も転がった。




 ――そして。




 俺は今、炎上する街の中、巨大なトイプードルを前にして、ノーネームエッグを発動した。

 発動したんだけど。

 すっごく輝いているんだけど。


 輝くだけなんだ……。


 直感で分かる。

 このスキルに攻撃手段がないことが。

 双子の言葉を思い出す。


 ――「まだそのエッグにはスキルが宿っていません。これから貴方がそのエッグにスキルを宿すのです。強力な力を持っていますが、1つ欠点があります」


 ――「なんだよその欠点って」


 ――「攻撃ができません」


 攻撃ができない。

 それは分かったよ。だけど……。

 強力な力っていってなかったか?

 これのどこが強力なんだよ!


「あっ!」


 船が離脱していくのを見て、思わず声が漏れた。

 今、あの船に追いつかないと、もう全てが手遅れになる。


 嫌だ!

 転生者のみんなや、家族を失いたくない。


 俺が……俺が、みんなを救う。全部を守ってやる!!




 ブゥーーーーン……。


 俺の中で何かが切り替わった。

 エッグのスキル発動とはまた違うなにかだ。

 さっきのクリアな感覚に近い。


 心臓の鼓動が急激に早くなり、体温が一気に高まる。

 髪は逆立ち、吐く息は炎の中でもハッキリと白い湯気。

 熱で褐色になる全身の筋肉細胞が、唸るエンジンのようにビクビクと振動している。


 ――熱い。だからなんだ!


 しっかりと地面を踏みしめ、俺は全力の一歩を踏み出した。


 ダンッ!!


 なんだ?

 早すぎて視野が……狭い。

 見つめている正面意外が認識できていないのか?

 俺……ロケットみたい!?


 目の前を遮る炎の熱さなんて、疾風となる俺には届かない。

 俺に貫かれた炎はすっかりと掻き消えていた。


 ――「……すけて!」


 何だ、誰かの声が僅かに聞こえた。

 助けを求めているのか? 見捨てるワケにはいかない。

 だけど、この状態じゃ周りの状況が掴めない。


 だったら、感覚を研ぎ澄ませ!

 さっきみたいにだ。

 視野を広げろ! そう――超感覚だっ!!


 キーーーーーーン……。


 よし、来たッ。

 いや、さっきよりも更に精度が高いのを感じる。


 俺の周囲の環境、全てが手に取るように分かる。

 俺を取り巻く世界が、秒針の動きを鈍化させた。


 正面の崩壊しかかる建物の外壁を蹴ってUターン。

 オフィスビルを貫く鉄骨に捕まる。


 助けを求めているのは小さな女の子だ。転生者ではないだろう。

 女の子の頭上の電飾看板のボルトが悲鳴をあげている。

 落下したと同時に俺は鉄骨を蹴り、一気に距離を詰める。


 看板よりも先に地面へ着地し、女の子を抱きかかえると数十メートル先の空き地へ避難させた。


 飛空艇の音はまだ近い。

 今なら間に合う。


 再び地面を蹴る。

 目の前の炎の中から、巨大な大蛇が現れ俺を捕食しようと口を開けた。


 体を捻り、錐揉きりもみのように直進することで、大蛇の牙の隙間をするりと抜ける。

 直後に大蛇の顔を足場代わりに蹴り、軌道修正。


 崩落するビルの瓦礫の中を稲妻の如く駆け上がると、街を囲む赤銅色の壁の頂上に到着した。


 見張り台を兼ねているその高台の下には夜空が見える。

 双子がいっていた背中合わせの空だ。


 飛空艇は壁よりも先を飛んでいる。

 もうワイヤーに自分を捕獲させる作戦は間に合わないだろう。


 なら、こっちから乗り込むのみ!


 俺が踏みしめた鋼鉄の高台は、鈍くくぐもる音を立てて大きく凹んだ。

 そして俺は、飛空艇の側壁に体当たりし、穴を開けた。


 待ってろみんな。

 俺が救ってみせる!

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2026年1月2日 20:00

浮遊世界のキーエッグ~攻撃不能のハズレスキルと言われたが、超感覚と超人化で最強の神技パルクール! 依存系な妹と守銭奴でクールな癖に俺にだけデレる美少女ガンナーに囲まれ、ズバッと神々すら救う件~ 羽之 晶 @soranaoki

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