第3話「輝くだけのスキル?」①

 目の前の景色がパッと変わると、薄暗いドーム型の空間が現れた。


 大勢の人々が双子の次の言葉を待つなか、俺は家族を探し始める。

 みんなは? 無事なのか?

 振り返り周囲を見渡すと、俺がいる場所に向かって群衆を掻き分ける家族を見つけた。


「タルト、遅いから心配したじゃない」


「ごめんごめん。色々あってさ」


「タルトよ。エッグいエッグを見つけたか?」


「んー。そうだね。なんかエッグそうなのは見つけたっぽい」


 そう言ってミツキのもとに歩み寄ると、心なしかホッとしている様子だ。

 頭をポンと撫でて笑顔で応えた。


「なんだよ。ミツキも俺が遅くて心配したか?」


「全然……」


 冷たい言葉とは裏腹に嬉しそうな表情を浮かべてさ。

 もっと素直になれば良いのに。

 まぁ、それがミツキらしいってことなんだけどな。


 と、この安心感を長く味わう余裕は、ここにはなさそうだ。



「では皆様。これにてイースターエッグ選定の儀が完了致しました。幾人かにお伝えしたのは、そのエッグは異世界転生への鍵になります。転生と同時に、肉体と融合しますが一応無害なのでご安心を」


「そろそろ貴様達に向かって貰う、異世界についてを伝えねぇとなぁ」


 双子が同時に指を鳴らすと、ドーム全体が暗転し青空の映像が浮かび上がる。

 映像だけじゃない、俺達の頭上に立体的な空に浮く島々が現れた。


 プラネタリウムの進化版みたいだけど、その美しさと迫力に、ここにきて初めて人々から感動する声があがった。

 ミツキも思わず「わぁ、綺麗」と声を漏らした程だ。


「これから皆さんには、『浮遊世界アイン・ソフ・オウル』に異世界転生をして頂きます」


「浮遊世界……」


 映像が動き出し、それぞれの島国が俺達の頭上に現れた。


 王宮っぽい建物がある島や、SFの世界に出てきそうなハイテクな街――サイバーパンクみたいな島、そして俺達の見慣れた東京のような街がある島。


 あの神秘的な建造物が建ち並ぶ島とか行ってみたいなぁ。

 サイバーパンクみたいな街にも興味が有り有りだ。

 大きさは大小様々で島というより、大陸と呼ぶべきモノもある。


 さっきまでの恐怖や不安を忘れて、沸き立つ興奮と期待に、胸の高鳴りを覚えたのは俺だけじゃないだろう。ただ、映像をみて少し疑問に思う部分もある。


 空の中に浮遊島があるが、普通ありそうな海や大地がない。

 映像を見ての範囲だけど、下を覗き込んでもそれらしいモノがみえない。


「既に幾人の方々が疑問を持っているようですが、この世界にはベースとなる大地はありません。それら全てが浮いております」


「じゃあ、下には何があるかって? そりゃまた空と島国があるのさ」


「実際には空と空が背中合わせになっています。その中心ラインには重力が反転する磁場の境界線があります。容易にそこを抜けることはできないでしょう」


「大丈夫か? お前らのその小さな脳ミソで理解できるとは思えないけどな。ケケケ」


 無愛想な子供は、不気味なほどに無邪気な笑みを浮かべた。


「理解できなきゃジ・エンドだぜ。想像力のないヤツらは生きてイケねぇよ。どんな世界だろうとな」


「浮遊世界は途轍もなく広いのです。皆さんの住んでいた宇宙に匹敵する程の広さがあります」


 すると、今度は5つのアンティークキーが頭上に浮かんだ。

 それらは回転しながらイースターエッグに似た卵へ変化した。


「これらは、皆さんが手にしたイースターエッグとは全くの別モノ。キーエッグと呼ぶ特別なアイテムです」


「メチャクチャ強力なんだぜぃ」


「皆さんの異世界での目的はこのキーエッグを集めることです。5つ全てのキーエッグを集めた者達には素晴らしい奇跡が起きます。そう、元の世界に帰ることだって……」


 ――帰る。


 その言葉を大勢が復唱した。勿論俺たちもだ。

 家族みんなで帰りたい。浮遊世界ってのも気にはなるけど、今はただそれだけを願う。


 つまり俺達はスキルが詰まったイースターエッグを使い、浮遊世界アイン・ソフ・オウルを旅して5つのキーエッグを探し、集める。

 そしたら元の世界に戻れるって話みたいだ。


 でも、そう簡単じゃないはずだ。

 わざわざ俺達にイースターエッグを付与する程に、この世界には危険が満ちているってことだと思う。

 もしかしたら……死人がでる可能性だってあるのかも知れない。


 そして、俺だけに与えられたノーネームエッグ。攻撃ができないエッグで俺はどやってみんなを守ることができるんだろう……。



「まぁ、細かい話しは割愛する。面倒くさいからな。その代わりにコレをくれてやろう」


 指を鳴らすと、俺達の目の前にブック型の青い小冊子が現れた。

 胸ポケットに丁度収まりそうなソレをそっと掴む。


「諸々書いてあるから、またじっくりと読んでおけよ。読まねぇ奴はジ・エンドなのさ」


「では皆さん。もう中にはキーエッグを集めたいと、ウズウズしている方もおられるようです。我々の役目も一旦はこれにて終了となります」


「せいぜい、頑張れよ」


「皆さん。それでは、良い旅を」


 指が鳴ると同時に俺達の視界は再び暗転した。


 ――待ってろミツキ。見てろよ、父さん、母さん。必ず俺がこのエッグで、みんなを元の世界に連れ戻す!

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