第1話「炎の東京スカイツリーと2624人の異世界転生者」③
3時間前。
俺、
友達はタルトって俺のことを呼ぶ。
喧嘩が苦手で、超がつくほどに平和主義者……だと皆からいわれるが、自分ではよく分からない。
そんな俺は家族と共に、東京スカイツリーの展望台で馴染みのある街並みを見下ろしていた。
奥手で普段からあまり感情を表に出さない
「どうして東京に住んでいてスカイツリーなの。しかも休日だしさ。私達以外観光客だよね」
「仕方ないじゃないの光希。パパの計画したことが今まで上手くいったことなんてある?」
「ない」
母さん(
厳しくもその中に優しさがあって、料理も上手いし自慢の母さんだ。
光希は言葉数こそ少ないが、その分、一言一言に遠慮がなく、もしかすると母さんよりも指摘が鋭い。もう少し愛嬌があれば可愛いんだけどな。
「まぁまぁ、良いじゃないか。そういう時は逆に考えてみるもんだ。自分達が住んでる街を見下ろすって経験はないだろぅ? 近くにあると意外に行かないものだ。きっと新しい発見や未知の経験が待っているのかも知れない。パパ的にこの作戦に名前を付けるならぁ……そうだな、近場リバース作戦とでも呼ぼうじゃないか」
父さん
父さんは良く影が薄いといわれることがある。
会社でも1日中誰からも気付かれないことだってあるらしい。
決して目立たない性格でもないのに不思議でもある。
本人は自慢げにいうけど、俺としてはちょっと心配だ。でも優しくて面白くて、いつも家族のことを第一に考えてくれる。
母さんと光希は、そんな父さんの言葉を聞いて落胆と嘲笑に満ちていたが、俺は父さんの作戦名を聞いて心が踊った。
「父さん凄いよ。確かに近くにあるからいつでも行けると思っていたら、結局全然行かないってことあるもん。近場リバースは逆転の発想だよね」
「そうだろ多留斗。今度、友達と近場リバースを使うことを許可しよう」
「あざーす」
「ママ、私お腹空いちゃった」
「そうね。稔、そろそろランチにしようよ」
「そうだな、して今日のランチ作戦は……」
父さんの言葉に耳を傾けていると、激しい閃光が俺達を包み込んだ。
何が起こったのか状況を理解するよりも早く、爆発音と熱波、そして悲鳴が俺達に襲いかかった。
あちこちで爆発が起こり、飛散したガラスや内装が荒れ狂う。
気付けば俺と父さんは、降りしきるスプリンクラーの水の中、光希と母さんの上に覆いかぶさっていた。
鳴り響く警報音と、恐怖や苦痛に泣き叫ぶ人々の声が混ざり合い、こっちまで混乱する。
鼻につく焦げた臭い。
見上げると、黒煙が天井で蜷局とぐろを巻きながら広がる。
咄嗟に、避難誘導灯のグリーンランプとLEDの閃光を視界に捕らえた俺は、家族に避難を勧めた。
「ここから早く出ないとッ」
「煙を吸っちゃダメだ。服でも何でもいいから鼻と口を覆って、姿勢は低くだ。良いな!!」
父さんがそう助言をした時、誰かが悲鳴にも似た叫び声をあげた。
「か、傾いてる……崩落するぞッ!!」
地面が揺れ、確かに傾きを感じた俺達を嘲笑うかのように、トドメの爆発が全てを吹き飛ばしたんだ。
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