第8話

潜水艦が浮上し、海の上に浮かぶ、大きな島が見えた。

近づくと、大きな島だと思っていたものは大きな軍艦だった。


潜水艦から降りると

『祝帰還!ギル様、シンバ様、キーマン様』

の横断幕を持って、嬉しそうに3人の帰りを大勢の人が迎えに来ていた。

「話違うな!随分と有名人じゃねえか。役職ねぇんじゃなかったのか?」

「俺たち、役職はねえけど、成績は良いもんでね〜」

呑気に手を振るシンバ。気配を消すピーマン。感極まり涙ぐむギル。

(おいおい…この班大丈夫なのか?)


「おかえり、3人とも!…と、サルくん?だっけ?ヤホヤホ〜!!ここだよ〜!!

大衆の何処からか声が聞こえる。

その場に居たもの達は、その声の主に道を譲った。

(何だこの、チャラチャラしたメガネ男は。)

「お!ほらほら〜話してたプラチナだよ〜」

「お前ら久々だな!!誰も死んでなくて良かった良かった!!」

「プラチナの軍が警備当番の年だったんですね。」

「おうよ!それにしてもサルくん!遠路はるばるご苦労だったね」

「あ、どうも。」

「あ!ギルティ…あーーー。ダイヤモンドが、班長とサンくんに会いに来いってさ〜!他の奴らはしばし休憩!だってさ!!」

「分かりました。」

ギルが応える。

「行こ〜、サン坊〜」

「は?ちゃんと聞いてたのか?今から会いに行けって」

「だから行くところじゃんか〜」

「いや、シンバは休憩って言われただろ?」

「え?何言ってんの〜班長俺だよ〜」

「は?そうなのか??!」

「あとさ、そういえば歳も20じゃなくて、今29なんだよね〜」

突然の告白にサンの表情は瞬く間に明るくなっていく。

「……だよな!?くぅー!スッキリした…ずっとモヤモヤしてたんだよな〜!!!」

(今年21は見えねえもん。)

「ハハ、そんなに悩ませてたとは、悪いことしちゃったかな〜」

口ではそんな事を言いつつ、全く気にもしていない。

「なんで9もサバ読んだんだよ。」

「だってまだ仲間じゃないのに、ペラペラ言ってる方が変だろ〜もっと警戒しなよっサン坊〜」

シンバって普段は温厚なのに、時折見せる奥深くの冷淡な一面もある。イマイチ掴めないんだよなー。


それにしても人がちらほら居るのは全員プラチナの軍隊員なのか?てか、この建物、全部軍艦の上なんだよな。上から落ちてくる川とかもどうゆう仕組みなんだ?なんで軍艦の上に森林が?どうやってこの重みに耐えてるんだ?そして、さっきから首輪付けた動物とよくすれ違ってっけど襲ってこねえんだなー。誰かに飼われてんのか?


「なんで、あんなチンチクリンがシンバ様の班に」

「僕だって、シンバ様に助けられてココに居る。」

「学校に通わないって本当かしら?直ぐに班に入るってこと?」「そんな人今まで居た?」

ヒソヒソと聞こえる声は、右から入って左から出ていった。

その姿を見たシンバは微笑んでいた。

「君は大物になるね、きっと」

そう言って、また歩き出した。


歩いていると、立派な建物が現れた。門には、天秤とその両方に鏡と太陽が描かれていた。

「これ、気になりますかぁ?」

ひょこっと現れたのは、物腰柔らかそうな女の人だった。

「これぇ、ツクヨミは何も知らない人達に、真実を映し出す希望だよぉていう思いがこの紋章には込められて居るんですよお」

「へー…」

(喋り方変わってんな。)

「くくっ…ブハッ!あ〜滑稽すぎて、あ〜おもしれぇ」

シンバは笑いを堪えすぎて目には涙が見える。

「えぇ?なにがですかぁ?シンバってばおかしくなっちゃったのぉ?」

白々しく小首を傾げる。

「相手が悪かったなフィル〜こいつはお前のやっすい演技に引っかからねえよ。お前のことなんか少しも興味ねえんだからな〜」

シンバがフィルを煽ると

「ふぅ〜ん、どーゆーこと?」

「!!!」

(口調も雰囲気も違う…何かに取り憑かれてんのか?)

「こいつのことは無視でいい〜構ってたら日が暮れちまうぞ〜」

「待ちなさいよ。私は、その子認めないわよ。」

「それは、ボスが決めるんだろ〜じゃあな〜」


そして、エレベーター?ってやつで最上階へ到着した。

「落ちたら死ぬかな?」

「防御しなきゃ即死だろ。ほら、行くぞ〜」


コンコンッとシンバがノックする。

意外だ。俺が知ってるシンバならノックなどせずに入る。

余程の相手なのか?

「開いている。」

「ほんじゃ〜入りま〜す」

扉の先に現れたその姿は、紫の髪と妖艶な雰囲気漂う、いかにも只者ではないオーラを感じる。

静かに微笑みを見せながら、こちらに向けるその目の奥は全く笑っていない。

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