第6話
これが…才持ち…
正直…圧倒された。恐怖すら感じた。今もまだ現実と思えない…
「ハハッ…」
―
しかしサンは恐怖と同時に押し寄せる『何か』を確かに感じた
―
ハハッ…俺、死にかけたぞ…。それなのになんでこんなワクワクするんだ…さっきのは何だ…知りたい!!
「おい、大丈夫か。」
キーマンはサンの顔を覗き込む。
「ピーマン…」
サンは俯く。
「なんだ。」
「無口クールボーイキャラは辞めたのか…嫌いな相手をそんな必死に助けて、ずいぶん懐かれたもんだなっ」
へへっと笑う。
―『ほぅ…信用出来るか。だいぶ懐かれたもんだな。』―
「無駄に記憶力が良い奴だ。」
キーマンは満更でも無さそうだ。
「ありがとな…お前が居なきゃ多分死んでた。」
「大袈裟だ。その時は一緒に死んでやろう。」
「お前とは嫌だわ。…え?マジ?…」
あまりにも真剣な顔のキーマンを見て驚く。
「死に時ぐらい選べるくらいには鍛えてるつもりだ。」
(まだ俺には何か隠してんだな…このミステリーボーイめ)
「そんな事より、俺の才口外するなよ。」
「もし、言っちまったら?」
「俺は死ぬことになる。」
「は…それこそ大袈裟だろ!!驚かそうとしてんだなっ」
「多分な。」
「多分かよ!!!!それにしても、ジョインはあのまま気色悪い顔でこれから生活すんのか?」
「違うな。才と言っても、種類は様々だ。身体強化する才もあれば、俺みたいに魅了という他の者に影響する才もある。他の者に影響する才は掛けた者の生命力によって持続可能時間は変わる。」
「そうか。じゃあ今頃正気に戻ってんじゃねえか。ピーマン弱そうだし。」
「否定はしない。」
「してくれよ。まっまさか!追いて来たりしてねぇだろうな…ここかっ!ここかっ!!」
「何してるんだ…」
呆れた顔でサンの奇行を見ている。
「あ!!!!!!」
サンは突如口を開いた。
「なんだ。」
肩をビクっとさせた後、怪訝そうな顔でサンを見る。
「女の子居なかったか!俺よりちょっとちっこい位の!白いワンピース着てた、シンバと同じ髪の色の女の子」
「俺が来た時はお前とジョインしか居なかったが?」
「まあ、ジョインのあのアホ面じゃ何も出来ねえか。俺が狙いみたいだったし。」
「あ!!!!!!」
サンはまた思い出したように口を開く。
「なんだ。お前それしか喋り出せねえのか。」
「服選ぶの忘れてた!!」
「もう選んでいる。」
「俺の好みは!!!」
「着れればなんでもいいんだろ?」
「サンとの合流場所決めてなかった!!」
「俺が知っているから問題ない。」
「なんか…お前、すげえな。」
「付き合いは短いが、お前が褒めてない事だけはわかる。」
「褒めてんだよバーカ。さては照れてんな?」
「照れる?そんな感情持ち合わせてないな。」
「ここら辺よく来るのか?」
「あぁ。出身国だ。」
「お前さ…名前も才も言わねえのに、出身国はサラッと言うんだな。」
「皆に言ってる訳ではない。」
(ふーん…俺には教えてくれるってか。)
「ニシシッ」
「なんだ。気持ち悪いサル。」
ちょっと立ち寄っただけの『サムグ国、首都ビトレイアルン』色々あった。
何よりもピーマンと分かり合えた気がする。ピーマンのほんの一部かも知れない。でもいいんだ。これから、少しずつで。
―
しかし、そのほんの一部でも嬉しさで舞い上がるサンであった。
生まれてきて初めて、サンが自分から人へ興味が湧いた瞬間だった
―
サンとキーマンがジョインの前を去って、しばらくが経った頃。
ジョインは何をせずただただら横になり、ボーと過ごしている。
「あんた、いつまでそうしてるつもり?」
白いワンピースが揺れる。
「あぁ、コリンか。ツクヨミの奴の攻撃堪能してる所さ。」
「相変わらずね。そんな事より彼が本当に才持ちなの?そうは見えなかったけど。」
「俺の目に狂いはねえよ。任せろ。しかし、よくあそこまで計画通りに行けたもんだな。さすが『ユフ様』。」
「からかわないで。不快よ。」
「なんで『ユフ』なんだ?」
「何言ってるの?もうすぐ冬だからに決まってるでしょ。」
コリンは真剣な顔でジョインを見ている。
「あぁ。そういう奴だよお前は。」
「勝手に憐れむの辞めて。」
「な!なんで分かったんだ。俺が憐れんでんの。まさか、コリンも才持ちだったのか…」
「バカにしないで。私が才持ちじゃない事くらいアンタなら直ぐに分かるんでしょ。そんな事より彼の未来が楽しみだわ。」
「俺もだ。ワクワクを堪えるのに必死だぜ。近くで成長を見たかったんだがな…リンゴ持っていけば良かったか。」
「何言ってるのよ。バカの相手は疲れるから喋らないでくれる?」―
―
サンが選んだ道、その道は決して簡単な道では無いことだけは確かな事実のようだ
―
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