第5話

「一旦浮上し、首都ビトレイアルンで食料やサンの衣類調達しよう。」

「そんなオンボロ着られてちゃ〜俺達の格も落ちるって訳だな〜」

シンバは視線をサンを下から上へ一周し、鼻で笑う。

「服なんて着れればそれでいいんじゃねえのか。」

サンはシンバの態度に口を尖らせる。

「まあいいからいいから〜奢りだから気にすんな〜」



は?なんで俺は今、この男と会っているんだ?


ーーーーー遡ること2時間前―――――

ここは、サムグ国、首都ビトレイアルン。

四季折々が織り成す。サムグ国、屈指の観光名所。

「すげぇ。なんで、空が青いんだ!!雲がねぇ!!!ゴミが落ちてねえ!!!…なんて読むんだ?べ…トイレ…サン…?」

「おいサル。目立つからやめろ。サムグ国、首都ビトレイアルンだ。」

キーマンが煩わしそうに応える。

「なんだよ、だったら離れてろバーカ。」

「お、なんだそこ仲良いのかよ〜!そしたら、俺、ギルと食料調達してくっからよ〜!キーマン、服でも見てやってや〜!じゃあな〜!」

「キーマン、頼んだぞ。くれぐれも慎重にな。」

そう言って、ギルとシンバ、キーマンとサンへ別れた。

「あぁ。おい、サルいつまで騒いでるんだ…。」

っ!?サルが居ない。

キーマンが振り返ると既にサンの姿はそこにはなかった。

キーマンは深い溜息を着いた。


そんなサンはというと、呑気にビトレイアルンの街並みを謳歌していた。

「は?!なんで川から湯気出てんだ!?なんか独特な匂いするな。こっちは、葉っぱがオレンジだ、こりゃすげえな。」

ん?なんか、さっきからジロジロ見られてんな…。

「あ、あの!!」

突如、金色の髪に白いワンピースを着た見た目10代前半の少女がサンへ問いかける。

「あ、あの!!もしかして、お家無いの??だからボロボロなの??」

少女は、緊張しているのか指が震えている。

「いや、違う。いや、違わない。いや…違う?」

はっきりしない答えに

「やっぱり!!!お腹、、空いてるよね?」

とサンの様子を伺う。

「あぁ。リンゴが食べてえな。」

「え。リンゴ……まだ固いかも。」

「そうなのか。じゃあ、そこら辺から奪ってくるから気にすんな。じゃあな!……っ!?」

少女は震えながらも、サンの袖を掴んでいる。

え、今の状況やばくないか?!もし、ピーマンにでも見られたら絶対からかわれる!!!それだけは絶対に阻止しなければ!

「ど、、どうしたぁ?」

サンは精一杯の笑顔を見せるが、何処と無くぎこちなさが残る。

「あのね、私ユフって言うの。それでね、その格好ね、変だよ?」

「うっ」

曇りひとつないその瞳に為す術なし。

「俺はサン。あー服が欲しいな。」

「うん、着いてきて。」

ユフはニコッと笑い、下を向いたまま歩き出した。

(なんだかな〜…この雰囲気どこかで…こんな所に知り合い居ねえしな。勘違いか。俺の勘も所詮こんなもんよ。)

そんな事を考えながら歩いていると


「あれ、その姿、盗人様じゃーねえのか?」

聞き覚えのある声が響く。

「は??ジョイン??」

サンは突然の事で呆然としている。

「やーーっぱり!!結局外に出てんじゃねえか!やっぱ俺ってば見る目あるねえー。」

陽気に振る舞う姿にサンは違和感を覚える。

は?なんで俺は今、この男と会ってるんだ?

「お友達なの?」

コリンの問いに

「まあな。俺の国、唯一のバツサイだ!!」

サンはジョインに『ツクヨミ』と悟られないように応える。

「そうなんだ。知り合いって事は、サンもバツサイなの?」

ユフは『バツサイ』を好感に思っているのか、さっきから興味津々の様子だ。

「いや?俺はただの盗っ…」

サンの言葉に被せるように、ジョインは口を開いた。

「ちげえよな?『ツクヨミ』のサンだっけか?」

(は?今『ツクヨミ』って言ったのか?)

サンの予想外の展開に、思考が停止する。

「ひでえもんだよな〜…俺の誘いは無視してツクヨミさんの方には着いていくんだもんな〜…俺さ、悲しいんだよ?俺が見つけた才を奪られたんだぜ?サンも同情するだろ?」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ジョインが近づいてくる。

(考えろ。今は、ユフも居る。戦って勝てる保証はない。)


サンが出した答えは

「逃げるぞ。」

ユフを抱き抱え、街中を爆走する。

やばい、心臓の音がうるさくて上手く呼吸が出来ない!

吸って、吐いて。吸って、吐いて。


「よし、離したか?」

後ろを確認したその時

「あーあーあー。やっぱ才持ちだねえ〜才も自覚して

ねえってのにこの速さ。凡人は泣いちまうよ。」

「っ!?」

声の主は真横を並走していた。

「なあ、ツクヨミ辞めて、俺んとこ来いよ。」

ジョインはまだ諦めていなかった。

「嫌だね!!自分の道は自分で決めるさ。自分が選んだ道がいつか正解だったと思いたいんでね。そもそも才、才うるせえよ。何の才が俺にはあるんだよ。お前、見れるんだろ?だったら俺の才。見てみろよ。」

(時間を稼げ。ギル、シンバ、ピーマン…誰でもいい。この状況を打破する道は…)

「お、良い質問だねえ…でも…それは」

《おい、ツクヨミのサンは居たのか。居たら報告しろと何度も言っただろ。》

突如としてジョインの脳内に声が伝達される。

サンは何が起きたかわからず、ジョインを警戒し続けている。

「なあ、サン!お前と話してえって奴が居るんだけど。」

(なんだ?何を企んでいる。)

「待て。これ以上近づくな。」

ジョインはサンの言葉に渋々応える。

《ツクヨミのサン。俺が誰か分かるか?》

「!?」

声は脳に直接語りかけている。

「誰だ!お前みたいな知りたいは居ねえ。」

《そうか、今はまだそれでいい》

それ以降、不思議な声は聞こえなくなった。

「なあ!サン!お前」

「サル!!!目を閉じろ!!!」

ジョインの言葉を遮ぎり、キーマンが叫ぶ。

ギュッと目を瞑る。

「もう、いいぞ。開けろ、バカザル。」

「ピーマン。どうしてここが。」

キーマンの姿を確認した途端に緊張が解け、安堵でその場に座り込む。

「そんな悠長な話をしてる暇はない。俺の才でジョインを足止めできた。」

「ピーマン、才持ちなのか…?」

視線をジョインへやると、ジョインは、キーマンを愛情に満ちたような眼差しで立ち尽くしている。

「そうだが。最悪だよ。才持ちって誰にも言うなよ。」

キーマンは渋々応えた。

「なんで?才持ちってすげえってシンバが言ってたぞ。」

「リスク管理だ。俺の才は、魅了だからな。バレると使えねえし。戦闘向きでもねえ。」

そう言うと、キーマンはジョインの前に立った

「君は、僕とサンを追っては来ていけないよ、いいね?」

「ああ。」

ジョインはその場で気を失い、倒れた。

俺の知らない世界が目の前で繰り広げられた。

サンは目の前の異様な光景に愕然としていた。

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