第4話

「そういえば、サン坊〜なにか聞きたいこととかねえのか〜」

シンバは何やら聞いて欲しいようだ。

「そうだな…年齢?とか?」

「年齢ぃ〜?俺は、今年21のピチピチボーイよ。他の奴らは…知らねえな〜。」

「今年21!?てことは…今は20!!?見えねえぞ。」

「おいおい〜俺も溢れ出る色気?ってもん?困ってんだよ〜」

シンバの飄々とした姿にサンはなかなか掴めないでいる。

「はいはい、そんなとこだ。そんなことよりなんでシンバはツクヨミに居るんだ?」

「ん〜?大切な奴だったんだ〜。なんとそいつバツサイに奪られてよっ!怒りの執念に燃え上がった〜!て訳だな〜」

シンバは空気が暗くならないようにか、持ち合わせている性格なのか、明るく振る舞う。

「そうか…」

「お〜?なんだ?元気ねえじゃねえか〜。船酔いでもしたか〜?」

サンは少し動揺し、話題を変える。

「いいや!気にしなくていい!それよりもさ!才ってなんだよ!」

「お〜?才か!知らなかったか!じゃあ〜シンバ先輩が教えてやるぞ〜。まず、才とは、力だ!!それで選ばれし者って感じのやつだ!!だからお前は凄い!!」

あまりに大雑把な説明で困惑する。

「へー…」

「そんな説明じゃ、事実が曲がって伝わるだろ。俺が説明する。」

シンバの説明を聞いていたトレーニング終わりのギンが頭を抱えている。

「なんだよ〜ギルの堅物〜。だからモテねえんだぞ〜ベロベロベロ〜バァ。」

シンバの事は気にも止めず、ギンは続けた。

「まず才とは、力。これは間違いない。」

「だろだろ〜?」

シンバは嬉しそうに擦り寄る。

(この2人……距離感気になるな。)

「シンバ。うるさいぞ。喋る暇があるならトレーニングでもしてきたらどうだ。」

「なんだよ〜ケチ〜ケチ〜」

シンバは項垂れる。

「ケチ〜ケチ〜ケチャップ!ぷっぷっプリン!」

シンバは全く気にしていない様子だ。

「さて。才とは力。言わば特殊能力と言ったところか。才とは生まれた時から既に持っているもの。つまり、成長につれ増減するものでも、発症したりするものではない。選ばれた者のみが所有する力だ。そして、才持ちの親は、2人とも才持ちのケースが多い。片親が才持ちのケースも何件かは報告されている。だが、才持ちでは無いものから才持ちが生まれたケースは今のところ報告に上がって来ていない。つまり、お前の親は才持ちだったという可能性が高い。ということになるな。」

ギルの説明にサンは疑問が浮かぶ。

「親の話はあんまピンと来ねえけど、才ってやつを感じたことは無いぞ。」

その問いにギルは頷き、説明を続ける。

「そうだな。使う場面が無ければ、自覚せず一生終えることもある。例えばだが、貴族に餓死しない才があったとて、それを自覚して生きることは、まあないだろう。そいつによって才は無にも宝にもなる。」

「ふーん、才は1人1個なのか?」

「そうだな。2個所持しているケースは、稀だが、無くはない。だが、考えなくていい。それほど希少だ。そもそも才持ちってだけで希少だ。俺も才持ちではないからな。」。

「そうなのか?!でも俺に才があるってどうして分かったんだ?自分でも分からなかったのに。」

サンはギルが才を有していない事実に驚く。

「絶対に才持ちだと分かった訳じゃない。ただ経験則に基づいて仮説を立てたまでだ。しかし、他の者の才が分かる才持ちも居る。ジョインはその才を利用し、自分の価値を上げ、バツサイでのし上がった。現在はなかなか手を付けられない程、厄介な俺たち班の任務対象だ」

「ふーん…そうなんだな。…は?任務対象?つまり、殺すのか…?」

サンは不穏な雲行きに戸惑う。

「違うとは言いきれないが、生け捕りが理想だ。」

ギルが応えるとキーマンはサンの顔を覗き込んだ。

「おい、怖気付いたのか。サル。」

「サンだよ!!!うっせえな、ピーマン。影薄くて気づかないんだよバーカ。」

サンは慌ててキーマンとの距離を取る。

「ピーマンは嫌いだ。」

淡々と応えるキーマンにギルは微笑む。

「お前ら、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」

「ギル、勘違いは辞めてくれ。サルの面倒なんて見れるほどお人好しじゃない。」

サンはキーマンとの対話を諦め、投げやりになる。

「いいよ、もう。それで。」


―サル…いや、サンは、いくら話しても皆に通じる訳では無いと悟ったのである。―

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