ありがたいからだ
19XX年、とある学者が歴史的な大発見をした。
それは土偶と呼ばれ現代に伝わる物だ。
人の姿をデフォルメしたそれは現代の我々の目から見ると少し不格好で、不思議な造形バランスに感じられるが、それには何か当時の文化や、民俗学的な観点、とにかく何か歴史的な背景に基づいた素晴らしい意味がある造形なのだと誰もが信じて疑わなかった。
「これは歴史的な発見だぞ」
学者は夢中になり、土偶を次から次へと発掘し、研究に励んだ。
やはり、どの土偶も独特な造形をしているのが特徴だった。
やたらと体のバランスが悪い物が大半であり、本当に人を模しているのかさえも疑わしい。
だが何となく四肢があると思われるので、そのパーツのつき方から恐らくは人を型取った物だと思われた。
「何故こんなデフォルメされているのだろう……?」
足にあたると思しきパーツが、やたらと丸太のように太く、ペットボトルや壺がぶら下がっているかの様な奇妙な誇張表現に学者達は頭を悩ませた。
「昔の造形技術の限界……あるいは何か宗教、民俗学的な意味合いがあるのだろうか」
そして様々な思考を巡らせる。
世間一般から見たその謎の造形への見解は学者達の物と概ね同じだった。
きっと、現代の自分達には想像できないが、何かしらの理由があるのだろう、と誰もがそう信じて疑わなかった。
それからも、百年、二百年、人類史はその中で様々な土偶を発見しては、その独特なフォルムの理由に空想し、中にはその土偶に神秘性を見出し有り難がる人までいた。
――――――――――――――――――――
それから月日は流れはるか未来にて、とある学者が歴史的な大発見をした。
「これは……?過去の人類が作った物だろうか?」
地中から発見されたソレは一見すると人の形を模している像のようであったが、奇妙であった。
その謎のフォルムをした像は様々な学者の頭を悩ませた。
床から天井まで機械が所狭しと巡らされている、薄暗い研修室、像を真ん中に鎮座させ、それを囲みながら五人ほどの学者が観察する。
「何故、これはこんなにデフォルメされた造形をしているんだ?」
「どうやら、出土したところを考えれば、西暦二千年代の造形物だと思われるのですが……」
「馬鹿な。二千年代だって?ルネサンスと呼ばれる時代には、人類はもう精巧な人体の再現を彫刻で可能にしていたんだぞ?」
「そうだそうだ、なのにこの造形物は何だ?精巧な人体とはかけ離れすぎているじゃあないか。この太ももなんて、常人離れしているぞ。まるで太いペットボトル二本でもぶら下げてるみたいだ」
「それに、こんな胸部……豊が過ぎるというか、あり得ない形をした乳房と言うか……あまりにも造形全てがデフォルメされ過ぎている」
次々と学者達はその造形物に対して批評し、意見を述べた。
やはり、どうしても意味が分からない、と彼らを悩ませたのは誇張され過ぎたその人体のパーツだった。
やたらと太い太もも、奇妙に強調された胸、謎に多い露出、白人なのかアジアなのか、どちらとも付かない謎の頭部構造……
さらに意味が分からないのが、これが二千年代の物という事で、比較的近年に作られたと思われると言う事実だった。
これだったらソレよりはるか昔の芸術家達が手がけた彫刻の方が近年の作品だと言われた方が説得力がある。
「ふーむ、奇妙だ」
学者達は頭を抱えた。
そして、さらに驚かされたのはこの先だった。
そのような突飛な造形をした物が、次から次へと出土したのだ。
それらはどれも似たような特徴を持っていて、余計に学者達の頭を悩ませた。
「きっと、これは宗教、民俗学的な像だったのだろう」
そしてそう結論づける事にした。
と言うよりも、結論として意味が分からなかった、と言ってしまえばそれまでなのだが……
「まぁ、とにかく、過去の人達はこれを有り難がってたんだろうさ」
こう、神棚とかにズラーっと並べて飾ったりしてな。
と最後に付け加えようとしたが、流石にそれは妄想の飛躍のしすぎか、と学者は言うのを辞めると笑った。
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