『召喚じゃない。生成だ。〜ラビノコと魔王軍科学者見習いの復讐録〜』
なかごころひつき
第1話『これが最強の魔物だぜ』
第1話『これが最強の魔物だぜ』
勇者が魔王様を倒してから、だいたい五年くらいが経った。
世界は平和になった――
って、大人たちは言ってる。
でもさ、それって本当かな?
魔王様がいなくなった途端、今度は人間同士で戦争を始めるんだから、本当意味がわからないよ。
昨日まで「魔王が悪だ!」とか「魔王様を倒して世界に平和をもたらすんだ!」とか言って一致団結してたくせに、今日は国が違うだけで斬り合いをしてる。
「……人間って、ほんとバカだよな」
たぶん、これ言うと怒られるんだろうけど。
でも事実だからしょうがない。
ぼくの名前はメノー。
元・魔王軍の科学者――の、見習い。
年は……まあ、まだ子どもだし。
大人たちはよく「危ないから下がってろ」とか言ってたけど、研究のことなら誰にも負けない自信はある。
うーん……あった、って言うべきかな。
だって、勇者が強すぎたんだよ。
魔王様も、四天王も、幹部も、研究員も、
みんなまとめて倒されて、気づいたら生き残ってたのは――
ぼく一人。
「あのとき実験室の奥で雑用をしてたのが、運が良かったのか悪かったのか……」
それから五年。
ぼくは魔王城の地下とは別の場所に、こっそり研究室を作った。
岩だらけで寒いし、明かりも暗いけど、誰にも邪魔されない。
でも、自分の研究室なんて最高だ。
ちなみに、勇者は今どうしてるかって?
英雄扱いで王様の隣に座ってる……
なんてことはなくて。
「この戦争は間違ってる」とか言い出して、
今は牢獄にいるみたい。
本当に意味わかんないよね。
自分達の為に世界を救ってくれた人を閉じ込めて、戦争してる人たちが正義面してるんだから。
「だからさ……今がチャンスなんだよ」
人間たちはバラバラ。
勇者はいない。
人々は疑心暗鬼。
だから――
「魔王軍が、完全に終わったなんて言わせない。」
ぼくは研究室の真ん中に置かれた、大きな装置を見上げた。
これは、魔物生成マシーン。
魔王軍の偉い科学者たちが昔作った設計図を、ぼくなりに解読して、組み立て直したものだ。
もちろん、簡単じゃなかった。
設計図は難しいし、文字は古いし、
途中から「ここ勘でいいよね?」ってところも正直あった。
でも、動く。
ちゃんと、動くんだ。
「それに最強の魔物を作るために、どれだけ苦労したと思ってるんだか……」
材料集めは、ほんとに死にかけた。
S級魔物――エクセレントタイガーの毛。
正面から行ったら絶対死ぬから、三日間、草むらに隠れて様子を見て、寝てる隙に一本だけ。
引っこ抜いた瞬間、めちゃくちゃ吠えられて、そのまま全力ダッシュ。
「本当に心臓止まるかと思った……」
次も、S級魔物――ファンタスティックドラゴンの角。
正直、こっちはもっとヤバかった。
雪山で吹雪、視界ゼロ。
指の感覚なくなりながら、やっと見つけた折れ角。
「もう二度とやらない……」
でも、その全部が――
今日のためだ。
「よし……いくよ」
ぼくは素材を装置に入れて、スイッチを押した。
ゴゴゴ……と低い音。
魔法陣が光って、空気がビリビリ震える。
そして――
ドカン!
爆発音と一緒に、白い煙が研究室いっぱいに広がった。
「……成功、だよね?」
ドキドキしながら煙が晴れるのを待つ。
現れたのは――
「えっ…ちっさ」
そこにいたのは、白くて、ふわふわで、
ぴょんぴょん跳ねる、小さな生き物。
耳が長くて、目が丸くて。
「……ウサギ?」
しかも、こっちを見て首をかしげてる。
「え?なんかもっとこう……大きくて、怖くて、世界を滅ぼす感じじゃないの?」
ウサギは研究台を走り回って、
ケーブルにじゃれたり、ぼくのローブを引っ張ったり。
正直――
「……かわいい」
いや、違う違う!
「魔物だよね!?
ザコ敵みたいな見た目だけど、中身がヤバいタイプだよね!?」
そうに決まってる。
そうじゃなきゃ困る。
「よし、ステータス見てみよう」
ぼくは感知メガネをかけて、そのウサギを見る。
空中に文字が浮かび上がった。
――――――――
名称:未登録
種族:不明
レベル:1
攻撃力:1
防御力:1
素早さ:1
魔力:1
体力:1
――――――――
「……え?」
もう一回見る。
「……1?」
全部、1。
「……全部?」
ぼくはメガネを外して、ウサギを見る。
ウサギは何も知らずに、
ぴょん、と跳ねた。
「……」
しばらく沈黙。
そして、ぼくは小さく笑った。
「――だ、大丈夫だし」
「これは、たぶん……成長タイプだよ。すぐに成長するかと、進化するとかするに違いない。」
「うん、そうに決まってる」
震える声で、ぼくは言った。
「これが……最強の魔物だぜ。」
たぶん……。
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