もしも世界一嫌われている悪役貴族に転生した男が、世界一愛されていると勘違いしたら
お餅ミトコンドリア@悪役貴族愛され勘違い
1.「プロローグ(剣魔大会(表))」(※冒頭のみ女神視点)
「休日出勤とか、マジでふざけんなし、あの雷ジジイ!」
どこまでも続く真っ白な空間で愚痴を零すのは、女神だ。
「せっかく下界に下りてイケメンどもの身体を堪能しようと思ってたのに! あーしの計画が台無しだし!」
最高神を〝雷ジジイ〟呼ばわりした彼女は、同僚の女神が欠勤したせいで休みを返上して働かなくてはならなくなったことへの怒りをぶちまけた。
「よりにもよって欠勤理由が〝風邪〟って何だし!? 女神が風邪引いてんじゃねーし!」
一向に怒りが治まらない彼女だったが、現代日本から転送されて来た者を見ると、一瞬で切り替えて、女神らしい穏やかな表情を浮かべた。
「私は神です。残念ですが、貴方は死んでしまいました」
あー、仕事ダル過ぎだし。
何で休日にこんなことしなきゃいけないんだっつーの!
「ですが、貴方は両親から酷い虐待を受けた末に命を落としました。哀れな子羊に救済の手を差し伸べましょう」
酷い虐待? 知るかっつーの。あーしには関係ないし。
「貴方を異世界に転生させましょう」
ああもう、むしゃくしゃするし!
……そうだ! コイツに思いっきり嫌がらせしてやるし!
虚空にウィンドウを出して、転生先を〝世界一愛されている貴族〟から〝世界一嫌われている悪役貴族〟へと変更。
「貴方が転生するのは、とあるゲームの世界です」
今目の前にいるこのガキは、現代日本のとある家で、庭にある犬小屋もどきに鎖で繋がれて十年という短い一生を終えたし。ゲームのことなんて知らないから、いくらでも嘘をつけるし。
「貴方の転生先は、〝世界一愛されている貴族令息〟です」
本当は真逆だし!
あ、信じた!
コイツ、バカだし!
ペコペコ頭を下げて、「女神さま、ありがとうございます!」だって!
騙されてることも知らずに! 超ウケるし! キャハハハハハ!
「では、貴方を異世界に転生させます。貴方の新たなる生に幸あらんことを」
クスッ。家族からも使用人からも、そして出会う者全てから忌み嫌われるという最低最悪な人生をせいぜい堪能して来いっつーの!
あ~らら、行っちゃったし。
光に包まれて消える直前まで、何度も「ありがとうございます!」って繰り返しながら、満面の笑みで!
愚者ってのはああいう奴のことを言うんだし!
「ふぅ~、スッキリ♪」
ストレスだらけの休日出勤なんだから、このくらい楽しみがないとやってられないし!
「ぐはっ!?」
……え!? なんであーし、雷槍で貫かれて……!?
「って、え!? 雷ジジ――じゃなくて、最高神さま!? 何故ここに!? いえ、違うんです、これはその――ちょっとした手違いで……え、ええ、勿論、存じ上げております。一度異世界転生させてしまうと、変更も取り消しも出来ないということは。ですが、は、話を聞いて下さい! 私は決して、わざと彼にあのような転生をさせた訳ではなく――いや! やめて! 流石にその数の雷槍は、女神でも耐えられな――ギャアアアアアアアアアア!」
こうして、女神はしっかりとお灸を据えられたのだった。
※―※―※
女神さまの力で異世界転生した僕は、気付くと、広い部屋の中にいた。
何故か左目が見えないけど、それよりも、目の前の光景に釘付けになる。
立派な椅子に座っている僕の眼前にある縦に長いテーブルの上には、料理が並べてあったからだ。
「あれ~? どうしたんですかぁ? もしかして、食べたくないとか、そんなこと言いませんよね、坊ちゃま?」
ニヤニヤしながら僕の顔を覗き込んで来るのは、僕よりも二~三歳上だろうか、クルンと髪がカールしている可愛い女の子だ。
「えっと……あの……僕は、椅子に座っても良いの?」
「……は? 当たり前じゃないですか。椅子に座らずにどうやって食事を取るんですか?」
「!」
すごい!
前世では、ずっと家の外で生活させられたのに! 地面に這いつくばっていたのに、椅子に座れるだなんて!
「そんなことより、早くそのポトフを食べて下さいよ。まぁ、旦那さまの食べ残しを私たち使用人が食べて、更にその食べ残しがそれなんですけどね。完全に冷えていますし、具は無くて単なるスープと化していますけど。クスクス」
こ、これが僕の……食事……!?
ゴクリと唾を飲み込んだ僕は、前世で両親がこれ見よがしにご馳走を食べる姿を見せ付けてきた時の事を思い出して、テーブルに置いてあるスプーンを拳を握るように握り締めると、一口飲んでみた。
「! ……ううっ……ぐすっ……」
「あれ~? 何泣いてるんですかぁ、坊ちゃま? こちらのパンも食べて下さいよ。古くなって硬くなってもうパンと呼べるような代物じゃなくなっていますけど。クスクス」
パンを齧ってみる。
「……うっ……ううっ……ぐすっ……ううっ……」
「フフッ。あ~あ。更に泣いちゃいましたね」
楽しそうに少女が続ける。
「言っておきますが、これは全て、旦那さまの指示ですからね? こういう経験をした方が、両目が真の能力に目覚めた時に、その威力が高まるだろうからって。そりゃ私は、三年前にこの御屋敷で働き始めてから何度も坊ちゃまの
肩を竦める少女が、声を弾ませる。
「それにしても、そんなにショックだったんですかぁ、坊ちゃま? クスクス」
「……うん……すごくショックだよ……」
「フフッ。そりゃそうですよね、公爵令息ともあろう者が、こんな粗末な――」
「こんなに美味しい料理を食べられるんだから!」
「――へ?」
目をキラキラと輝かせる僕に、少女は目を丸くして硬直する。
「こんなに美味しい料理を食べたのは生まれて初めてだよ! スープ、めちゃくちゃ美味しい! パンもすごく美味しい!」
前世で僕が食べていたのは、鎖で繋がれた庭で手に入るもの――つまり、雑草・昆虫・カエルなどだった。
それらで空腹を誤魔化し、泥水を啜って喉の渇きを癒した。
だから、まず僕の分のご飯があるのが嬉しいし、それが雑草でも虫でもカエルでもなく、こんなに美味しい料理だなんて、なんて幸せなんだろう!
女神さまが言った通りだ!
「僕は、世界一愛されてる!」
「!? な、何を言ってるんですか!?」
「だって、父さんは、僕にこんなに美味しいものを食べさせてくれるんだから!」
「……美味……しい……!?」
「それに、君は、僕に食事を勧めてくれたよね! 『この料理、私も食べて美味しかったから、食べてごらんよ』って言って!」
「そ、そんなことは言ってない――」
「ありがとう!」
「!」
「そんな風に優しく接してくれて、ありがとう! 温かい言葉を掛けてくれて、ありがとう!」
「………………」
少女が言葉を無くす。
それにしても、身体のどこも痛くないだなんて!
前世の両親と違って、この世界の僕の親は、僕を殴ったり蹴ったりしないんだ!
食事だけじゃなくて、そこまで愛してくれるだなんて!
僕は、なんて幸せなんだろう!
「決めた! 僕は、僕を愛してくれるみんながピンチの時には、絶対に助けるよ! 命に替えても!」
「!」
少女の頬が赤く染まる。
「……急に変なこと言わないで下さいよ……調子が狂うじゃないですか……」
目を逸らす彼女に、僕は満面の笑みを向けた。
「僕を愛してくれてありがとう! 僕も君が大好きだよ!」
「だから、そういうのをやめてって言ってるんです!」
少女は耳の先まで真っ赤になった。
※―※―※
少女――メメディは、僕が昨日までの記憶を失っていると告げると、訝し気に眉を顰めながらも、色々と教えてくれた。
僕がイヴィラ・フォン・バッドネスという名前であることとか、前世で死んだ時と同じく、今の僕は十歳であることとか。
あと、どうやら僕は、幼少時代から特殊な固有スキルを持っていたらしい。
それは、両目で相手を見て、目が合うと、相手の体力を奪ってしまう、というものだった。だから僕は左目にアイパッチをしているのだ。
「そんな僕を見捨てないで、僕に暴力を振るうこともなく、ずっと傍にいてくれたんだね! なんて良い人なんだ! 本当にありがとう、メメディさん!」
「……メメディで良いですよ。坊ちゃまに敬称をつけられて会話しているところを旦那さまに見られたら、私クビになっちゃいますから」
「それは大変! 分かった! じゃあ、メメディ! 改めてありがとうね!」
「……別に坊ちゃまのためじゃないですよ。仕事だからそうしただけです」
※―※―※
それから、僕はこの異世界の父親であり毎日隈が出来るほど民の為に何か大切なことを研究しているギャンガス・フォン・バッドネス公爵や、燕尾服に身を包んだ中年執事長のディコセバさんなど、僕を愛してくれている人たちと出会った。
父もディコセバさんも、僕が記憶喪失だと告げても、取り乱すことなく冷静に受け止めてくれた。
ちなみに、母親は僕が生まれた直後に死んでしまったらしい。
命懸けの出産だったんだね……
この世界のお母さん、僕を産んで下さってありがとうございます。
※―※―※
《固有スキル〝キルアイズ〟の真の能力が発現しました。常時発動型のこのスキルは、何時如何なる時であろうと、貴方が両目で相手を見て、目が合うと、殺意の有無にかかわらず、相手は死にます》
「!」
突如頭の中に響いた機械のような女性の声に、僕は呆然とする。
「そ、そんな……!?」
フラフラと中庭に出た僕は、木の枝に小鳥が止まっているのを見ると、震える手で何とかアイパッチを外して、両目で見詰めた。
「ピィッ!?」
「!」
僕と目が合った小鳥は吐血、地面に落ちた。
「し、死んでる!」
小鳥の亡骸を両手で拾い上げる。
脳裏に、僕に愛情を注いでくれている人たちの姿が浮かんだ。
「僕を愛してくれるみんなを守るんだ! ぐあああああああ!」
僕は、〝両の眼球〟を自ら〝抉った〟。
「はぁ、はぁ、はぁ……これで……みんなは……無事だ……!」
激痛と共に噴き出す温かい血液を真っ暗な世界で感じた僕は、安堵に胸を撫で下ろしながら倒れた。
※―※―※
遠のいていく意識の中で、誰かが近付いてきた気配がした。
「こんな所で使い物にならなくなっては困る。ディコセバ。治せ」
「はっ! かしこまりました、旦那さま」
父とディコセバさんの声だ。
何やらディコセバさんが小さく呟くと。
「!」
失ったはずの眼球を、閉じた瞼の中に感じた。
「ディコセバさん、ありがとうございます!」
目を閉じたまま上体を起こして明るく礼を述べた直後、この状況が意味することに気付き、悪寒が走る。
「に、逃げて下さい、父上、ディコセバさん! 固有スキル〝キルアイズ〟が進化してしまったんです! 僕と目が合うと、死んでしまいます!」
必死に叫ぶ僕に、父は「ほう」と、小さく声を上げた。
「坊ちゃま、これで大丈夫ですよ」
ディコセバさんがアイパッチを僕の左目にしてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
恐る恐る目を開けると、小さな救急箱を手にした褐色のディコセバさんと僕の右目が合った。けど、何の変化も無く、ディコセバさんはただ優しく微笑んでくれる。
良かった~!
……でも……
「あの……やっぱり、僕の両目は抉っておいた方が安全だと思うのですが……」
おずおずとそう提案すると、父はいつも通り威厳のある表情と声で、僕に語り掛けた。
「イヴィラ。両目を抉ることは許さん。貴様には儂の役に立ってもらうのだからな。今後は毎日トレーニングを重ねて、〝キルアイズ〟を完璧に制御出来るようにしろ」
「! 分かりました、父上! お気遣いありがとうございます!」
僕は、濃い隈のある父の目をじっと見て感謝を口にした。
僕の身体のことを、こんなにも想ってくれるだなんて!
父さんの愛情をひしひしと感じるよ!
※―※―※
それから毎日、僕はトレーニングに没頭した。
幸運なことに、公爵家なので、家の敷地はとても広く、〝僕以外立ち入り禁止区域〟を作ってもらって、その中で、鳥や虫やカエルなどに対して〝キルアイズ〟を意図的に発動する練習と、逆に発動しない訓練を交互に繰り返した。
殺す度に、「……鳥さん、ごめんなさい……」「……虫さん、ごめんなさい……」と謝りながら。
※―※―※
夜間は、父に頼んで貸してもらった大量の本を自室で本を読み、この世界のことを色々と知った。
※―※―※
そして、五年が経った。
※―※―※
「ふむ。どうやら、物にしたようだな」
まずはディコセバさんを両目で見て、しかし何の影響もないことを確認した後、今度は父自身も、眼帯を外した僕と目を合わせて頷いた。
「よく頑張ったな。何か褒美をやろう」
「ありがとうございます!」
胸の奥底から温かい気持ちが湧き上がってくる。
嬉しい! 頑張って良かった!
五年間の特訓のおかげで、〝殺意を持って相手を両目で見た時〟は相手を殺せるが、そうでなければ〝キルアイズ〟は発動しない、というように、制御出来るようになっていた。
「欲しいものはあるか?」
「それなら……えっと、その……友達が欲しいです!」
意を決して告げた。
勿論、僕は既に幸せだ。
この世界でただ一人の家族に愛されている。
使用人のみんなにも愛されている。
これ以上を望むなんて、バチ当たりかもしれない。
でも、どうしても諦められなかった。
前世では、僕は日常的に暴力を振るう両親以外の誰とも会えなかったから。
「……通りから笑い声が聞こえる……良いなぁ……僕も誰かと遊びたい……」
当然、友達は一人もいなかった。
そして、ギャンブルで大損して怒り狂った両親は僕に八つ当たりをした。
ナイフで滅多刺しにされた僕は、孤独なまま最期を迎えたのだ。
今世は、同じ轍は踏まない。
友達を作るんだ!
「そうか。友か」
僕の懇願に、顎を触り少し思考する父。
「では、来週、〝友達作り大会〟が王都で行われる。それに出場することを許してやろう」
「本当ですか!? ありがとうございます、父上!」
「やったー!」と僕が飛び上って喜んでいると、父も嬉しく思ってくれたのだろう、ニヤリと口角を上げた。
※―※―※
一週間後。
馬車で丸一日かけて、西側にあるバッドネス公爵領からこのディリフォレーズ王国の中央にある国王直轄領にある王都の闘技場――コロシアムに到着した。
参加するのは僕だけど、心配だからか、父も一緒に来てくれた。
ちなみに、二頭立て幌馬車の御者台にはディコセバさんが座っている。
「剣と魔法の〝剣魔大会〟に参加する方は、こちらが受付となっています」
事前に父が通信魔導具で申し込みをしてくれたおかげで、受付はスムーズだった。
「そう言えば、さっきケンマ大会、と言っていましたよね? 〝友達作り大会〟の別名か何かですか?」
「研磨――つまり、己を磨く、ということだ。大切な友と切磋琢磨する、ということに他ならない」
「なるほど! とても素敵ですね!」
父の説明に、僕は胸が高鳴った。
「よ~し、絶対に友達を作るぞー!」
「坊ちゃま。その意気です」
ディコセバさんも穏やかな笑みで励ましてくれる。
※―※―※
「私はカカナよ」
黒ローブを着用した長い銀髪の美少女魔法使いが一回戦の相手だった。
サングラスをしており、右手の人差し指には青色の指輪がキラリと光っている。
そりゃ、僕の固有スキルの事を知っていたら、怖いだろうから、サングラスとかはするよね。目を合わせる訳にはいかないからね。
円形の舞台の上で、僕とカカナさんは対峙する。
ちなみに、受付の人によると、少し高い位置にある客席と舞台の間にある透明な魔法障壁は、魔法と武器の攻撃を防ぐけど、出入りは自由に出来るとのことだった。
「よろしくお願いします、カカナさん!」
「カカナで良いわ。あと、タメ語で結構よ」
「分かった! カカナ!」
この大会は、どれだけたくさんの人と友達になれるかという勝負だ!
「よ~し!」
まずは、頑張って彼女と友達になるんだ!
「イヴィラ。貴方の噂は聞いてるわよ。だから、こうして対抗手段のサングラスまで掛けて、会いに来てあげたの」
「! そうだったんだね! わざわざ会いに来てくれてありがとう!」
すごい! 家族や屋敷のみんな以外からこんな風に言ってもらえるだなんて!
やっぱり僕は、世界一愛されているんだ!
カカナは、不敵な笑みを浮かべた。
「礼には及ばないわ。だって、直ぐに〝終わる〟もの。『アイシクル』!」
カカナが手を翳すと、氷柱が出現、勢い良く飛んでくる。
「うわっ!」
僕は転がるようにして慌てて避ける。
「よく回避したわね」
危なかった!
この一週間近く、父のボディガードも兼ねているディコセバさんに毎日〝回避〟に特化した戦闘訓練をしてもらっておいて良かった!
最初は「〝友達作り大会〟なのに何で戦闘訓練!?」って思ったけど、友達になるってきっとすごいことだから、カカナみたいに、まずは〝相手が自分の友達に相応しいか〟を試す人もいるんだね!
あ、あとは、もしかしたらこうやって少し焦らした後に友達になった方が、この大会はポイントが高いのかもしれないし。
んー、でも僕は、そういう駆け引きとかは全然出来ないから、真っ直ぐぶつかるしかない!
「これは避けられるかしら? 『アイシクルレイン』!」
「!」
カカナの頭上に氷柱が複数生み出されて、次々と飛んでくる。
「ひゃあっ!」
僕は円形の舞台の上を右に左にと素早く駆けて、必死に逃げ回り続ける。
「その〝目〟の固有スキルだけに頼った戦闘スタイルかと思ったら、案外動けるのね。でも、いつまで持つかしら? 『アイシクルレイン』!」
そうだ。
これだけ全力で走り続けていたら、いつか限界が来る。
カカナの魔力がどのくらいあるかは知らないけど、僕の体力の方が上回っている保証なんてどこにもないんだ。
「くっ! カカナ! 僕はただ君に友達になって欲しいだけなんだ!」
「……は? 何言ってるの?」
やっぱりまだこれじゃ足りないんだ!
最後まで逃げ切れば友達になってくれるかな?
「そろそろ諦めなさい! 『アイシクルレイン』!」
「嫌だ!」
絶対に最後まで逃げ切ってやる!
氷柱の雨の中、僕が改めてそう決意した直後。
「「「「「ガアアアアアア!」」」」」
「きゃああああああ!」
「モ、モンスターだああああ! 逃げろおおおおお!」
「「!」」
空に数多の魔法陣が出現、そこから幾多のワイバーンが現れた。
観客たちは大混乱に陥り、逃げ惑う。
何で王都のど真ん中にモンスターが!?
魔王軍が攻めてきたのか!?
僕は、本で読んだ内容を思い出した。
このディリフォレーズ王国の北側の隣国は魔王国で、魔王は世界征服を虎視眈々と狙っているんだ。
「ガアアアアアア!」
「ヒィッ!」
急降下してきた一匹のワイバーンが、大口を開けて一人の客に襲い掛かろうとする。
「『アイシクル』!」
「ガアッ!?」
が、カカナの氷柱がワイバーンを背後から貫き、防いだ。
「「「「「ガアアアアアア!」」」」」
ワイバーンたちは、標的をカカナに変えたらしく、一斉に舞台に舞い降りてくる。
「『アイシクルレイン』!」
「「「「「ガアッ!?」」」」」
流石はカカナ、同時に六匹のモンスターを氷柱で撃ち落とすが。
「ガアアアアアア!」
「! しまっ――」
逆方向から接近してきたワイバーンに気付くのが遅れた。
「〝キルアイズ〟!」
「ガアッ!?」
アイパッチを投げ捨てつつカカナに向かって走っていた僕が、間に入って両目でワイバーンと目を合わせて倒す。
「何で助けたの? 私たちは敵同士なのに……」
「ライバルだけど、敵じゃないよ! 僕は、カカナと友達になりたいんだ!」
「……また訳の分からないことを」
「まずはモンスターを倒さなきゃ! 力を合わせよう!」
「……不本意だけど、そうするしかなさそうね」
互いに背中を預けながら、僕たちは共闘した。
「『アイシクルレイン』!」
「〝キルアイズ〟!」
「「「「「ガアッ!?」」」」」
モンスターの数が少しずつ減っていく。
これなら行けるかも!
そう思ったのも束の間。
「くっ! 魔力が……!」
どうやら魔力切れになったらしいカカナが膝をつく。
「イヴィラ、貴方は逃げなさい!」
優しいんだね、カカナ。
僕は、カカナの前に立ち、両手を広げた。
「……貴方、一体何を――」
「モンスターたちよ! 来い! 全員僕が倒してやる! カカナには指一本触れさせない!」
「!」
ワイバーンが、僕に向かって飛んでくる。
「ガアアアアアア!」
「〝キルアイズ〟!」
「ガアッ!?」
続々と飛翔してくるモンスターたちを討伐していくが。
「ガアアアアアア!」
「ぐぁっ!」
多勢に無勢、一体ずつしか倒せない〝キルアイズ〟が追い付かず、一匹のワイバーンに僕は左腕を食われる。
「僕が守るんだ! そして、カカナに友達になってもらうんだ! 〝キルアイズ〟!」
「ガアッ!?」
その後も必死に戦い続けると、一匹、また一匹と敵は数を減らしていき。
「やった……!」
全て倒すことが出来た。
肩で息をしながら僕が呟くと。
「「「ガアアアアアア!」」」
「!」
ドラゴンが三匹出現。
「がぁっ!」
右腕・右脚・左脚をそれぞれ食われる。
「〝キルアイズ〟! 〝キルアイズ〟! 〝キルアイズ〟!」
「「「ガアッ!?」」」
が、何とか三匹とも倒すことが出来た。
「あっ!」
倒れたドラゴンの尻尾が掠って、カカナのサングラスが遠くへ吹っ飛ぶ。
四肢を失い地面に転がる僕は、出血多量で朦朧としながら、カカナに目を向けた。
「ヒッ!」
目が合い、身構えるカカナだったが。
「……あれ? 死なない。何で……?」
僕は身体中から力が抜けていく中、困惑する彼女に向かって必死に言葉を紡ぐ。
「……カカナ……大丈夫……?」
「……私は大丈夫よ」
「……良かっ……た……」
「!」
目を見開くカカナ。
……もう……限界だ……
……意識が……途切れる……
……もし……
……もしまた……生まれ変われたら……
「……来世は……僕と……友達に……なっ……て……」
「!」
カカナの瞳が揺れる。
僕は、視界が暗くなっていき、目を閉じた。
パーン
「起きなさい!」
「!?」
頬を思いきり叩かれて、僕は目を開ける。
カカナの綺麗な顔が間近にあった。
「……なってあげるわよ」
「……え?」
「友達になってあげるって言ってんのよ!」
「……本……当……!?」
「ええ。だから、死ぬのは許さないわ! 四肢が欠損してようが知ったこっちゃない。根性で生きなさい!」
「……うん……!」
不思議だ。
もう消えようとしていた生命力が、再び燃え上がるのを感じる。
「……カカナ……友達に……なって……くれて……ありが……とう……!」
「……ふん」
こうして、前世・今世含めて、僕は生まれて初めて友達が出来た。
※ ※ ※ ※ ※ ※
(※お読みいただきありがとうございます! お餅ミトコンドリアです。
現在、カクヨムコンテスト11に参加しています。
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