「七年間」

あの頃はね

「なおさん」が言えなくて

私は猫ではないのだけれど

「にゃーさん」と言って

後ろをくっついて歩いていたのよ

君がここに

やってきたのは七年前

甘やかしてきた七年間

私も

いつの間にか年を取り

走り回る君の足の速さに

付いていくのも一苦労


甥っ子も十歳になりました

毎日繰り返される母親のお説教に

心半分

「うるさいなぁ」と

ボヤいている

こりゃ「クソババァ」と

暴言を吐く日も

そう遠くはないだろうと

苦笑しながら傍観している私に

なおさんが甘やかすから と

一緒になって叱られる

困ったものね

そんな私の姿を見て

したり顔でニヤける君を

生意気になったと言うべきか

大人になったと言うべきか

とにかく

父親がいなくても

子供はたくましく育つようだ


この子があの日

妹に手を引かれ

やってきたのは七年前

それまで

仕事に追われて生きてきた私に

降って湧いた君の存在

シングルマザーになった妹の代わりに

この子が淋しくない様に

見守ってきた七年間

人の親になる事の大変さを

教えてくれたこの子も

今では

手を引き歩く事もなくなり

たくさんの友人に囲まれて

遊ぶ事の方が多くなった


「あおと」も

十歳になりました

そりゃ私も

年を取るはずだわ

あの日

妹に手を引かれて

やって来たのは

小さな君だったけど

いつの間にか

ここに居なかった年月を追い越し

真新しかったランドセルも

傷だらけになっている

だから いつか

小さかったはずのこの子が

私の顔を

見下ろす日が来ても

私はもう

驚かないだろう

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