汎時的(パン クロニック)なFワード ~インターネット時代に「ニワカ」として生きること~
たけりゅぬ
第1章:もっとも美麗なFワード
2025年、私は一組のバンドに、文字通り「釣られた」。
イギリスの新星、ザ・ラスト・ディナー・パーティー(TLDP)。ヴィクトリア朝のドレスを翻し、クイーンのような劇的さと、ABBAのような多幸感溢れるメロディを奏でる五人組の乙女たちだ。メインボーカルのアビゲイル・モリスは、若き日のレイチェル・ワイズ※を彷彿とさせる知的な気品を湛えている。黒髪の艶、白い肌、そしてどこか浮世離れした演劇的な佇まい。
だが、私が彼女たちの軍門に降ったのは、そのクラシックな美貌のせいではない。
優雅な旋律が最高潮に達し、聴き手がその「懐かしさ」に安らぎを覚えかけたその瞬間、彼女たちは平然と、むき出しの「Fワード」をぶち込んでくる。それまでの気品をかなぐり捨てるような、直接的な欲求の爆発。
特筆すべきは、彼女たちが放ったその一言には、剥き出しの「身体性」が付与されていたことだ。それは単なる記号としての罵詈雑言ではない。
「And I will fuck you」――。※
その言葉は、エロスと生命力が混濁した、生身の人間だけが持ち得る手触りを伴っていた。
なぜ、この身体性を伴う一言がこれほどまでに新しいものとして響いたのか。その謎を解くためには、まず私たちが生きているこの時代の「時間の正体」について整理する必要がある。
※The Last Dinner Party/Nothing Matters
Nothing MattersのサビにおけるI Will Fuck Youという宣戦布告のような一節は、クイーンの「We Will Rock You」に対する、不遜で肉体的なオマージュであると読み解くことも可能だろう。彼女たちはロックの伝説的な支配宣言すらも、自分たちのエロスのための小道具として簒奪してみせる。
※レイチェル・ワイズ:「コンスタンチン」「スターリングラード」「ハンナプトラ」などに出演した英国の女優。
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