第2話 集結

灘区福住通の邸宅は、大晦日の夜になると息をひそめる。昼のうちは現実の家屋と変わらぬ佇まいを見せていた瓦屋根も、日が落ちる頃には瓦の隙間から妖火がにじみ、敷地を囲む塀の影が妙に長く伸び始める。

 その中心に、五人はいた。


 前田直子は猫又の尾を軽く揺らし、遠野小雪は白息とともに夜気を凍らせる。白川珠緒の狐面には年越しの護符が結ばれ、織田恵子の影には蜘蛛の糸が幾重にも重なって揺れていた。そして善之だけが、人の姿のまま縁側に立ち、夜の気配を黙って受け止めていた。


 やがて邸宅の門が、音もなく開く。

 行き先は五毛神社。百鬼夜行の集結点だ。


 五毛通りを進むにつれ、路地の向こうから次々と妖怪が現れる。提灯お化け、火車、付喪神、名も忘れられた古い神々。誰も声を荒げることはなく、ただ流れるように列が組まれていく。その中心に五人は自然と組み込まれ、絵巻の一場面となった。


 五毛神社の境内では、すでに夜行が完成していた。太鼓の音は鳴らされない。ただ足音と衣擦れ、そして人ならざる者たちの呼吸だけが、年の終わりを刻む。

 合図もなく、百鬼夜行は動き出す。


 行列は街を離れ、摩耶山へと向かう。登るにつれ空気は澄み、妖怪たちの輪郭は次第に淡くなっていった。山は境界だ。現世と異界、俗と神を分かつ場所。

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