day1.5 営業か、それとも
当日深夜~翌日
『あいだよ!まだ話の途中だったのに....』
深夜0時44分。
帰宅してネクタイを緩めた俺のスマホが、間の抜けた音を立てた。
送り主は、今日店で隣に座った「あい」。
「話の途中」と言われても、正直、時間をやり過ごすことを優先したため何を喋ったか、あまり記憶が定かじゃない。
「今日はありがとうございました。また機会があれば……」
俺は鏡に映る自分に「よし、大人の対応だな」と頷き、社交辞令のテンプレを送信して眠りについた。
だが、翌日の昼。
あいの追撃は予想外の角度から飛んできた。
『土曜日なにしてるの?』
『夜ごはん行こー』
(えっ、メシ?)
店に呼ぶわけでもなく、いきなりのご飯の誘い。
(いやいやいや、営業だろ)
普段なら絶対に行かないが、あいにくその日は、街の床屋で髪を切る予約があり近くまで出かけている。
「20時30分からなら大丈夫だけど」
一応送ってみた直後。
『遅すぎてむり笑』
秒速で切り捨てられた。
(うん、やっぱり営業だな。)
「じゃあまたの機会だ笑」と、俺は引き下がった。
ところが、あいはここからが読めなかった。
『どこで切るのー』
「街のアーケードがあるあたりー」
『じゃ会えるかも!!』
(会えるかも、って。外でか?)
それとも「会えるかも」という言葉の裏に、
俺がまだ理解していない別の意味があるのか。
「どんなスケジュールにします?」
俺は、少しばかりの期待も持ちながらどっちなんだと問いかけてみる。
だが、返ってきたのは、
『時間はっきりしないよね?終わり次第連絡して!』
という、超絶ザックリとした丸投げ指示だった。
普段の仕事なら「スケジュールを確定して」とお願いする場面だが、
「わかったよ」
気づけば俺は、了承の旨を返信していた。
普段なら絶対にしない「詳細不明、待ち合わせ場所未定」という最悪のアポ。
なのに、俺の頭の片隅では、
(これ、店じゃなくて本当にプライベートの誘いなのか?だからこんなにふわっとしているのか?)
なんて、お花畑な勘違いがスクスクと育ち始めていた。
こうして俺は、自分から進んで「まな板の上の鯉」になりにいったのだ。
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これって、……営業、なのか?
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