第2話 エネルギー充填6%!
やるべき事は決まった。体力の限り周回してやるぜ。
初回がパン、そして果物、パンと来て四周目もパン。
宝箱が増えている可能性も考えて毎回奥まで進んでるが、やっぱり一個しか出ないのか?
そんな事を考えながらの五周目、箱を開けるとそこには小さな巾着袋がちょこんと置いてあった。
「なんだ?粉?」
中には少し黄色っぽい小さな粒。多分食べられるものだろう。根拠はない。
「ペロッ………こ、これは……!?」
幸せをもたらす成分!脳を突き抜ける喜び!清貧に努める(強制)村のおばちゃん達すら狂わせる魅惑の粉!
「さささ砂糖だぁぁぁ!!」
手のひらサイズの巾着にいっぱいの砂糖!あいつもきっと喜ぶぞ!
「フレアァァァ!!待ってろよフレアァァァ!!」
俺は勢いよくフレアのもとへ走った。これは本物のお宝だぞ!
家に戻ると、フレアはまだ意気消沈していた。今日くらいは休むってことなんだろう。だがそんな風にする必要は無いぜ。
「フレア! 宝箱すぐ復活したぞ!ほら見ろ!砂糖だ!砂糖が出たんだ!」
「!?、見せて!……すごい。こんなにいっぱいの砂糖はお祭りの準備に使うのを村長の家でしか見たこと無いよ。……よかった。これで少しは希望が持てるね」
「少しなもんか!砂糖は高いんだぞ!みんなに教えようぜ、冒険者は呼べなくても砂糖を売れば生活は楽になる」
フレアは少しだけ考えて、首を横に振った。
「まだダメだよ。よく分かってないんだよあんちゃん。宝箱がすぐに復活するのはよかったけど、入口は狭いし、スライムしか出ないから冒険者なんて来ない。自分たちで通うにしても、村のみんなが畑を放り出してダンジョンに集まったら何かあったときに村が飢えちゃう。今は……まだ隠しておこう」
「ぐぬぬ……そうか、俺達みんながあのダンジョンに詰めかける訳にはいかないな」
俺は渋々頷いた。まだ分からないなら、分かるようにすればいい。
その日はパンと果物を分けて食べた。明日は沢山周回して腹いっぱい食べような。
◇◆◇◆◇
翌日、二人で再びダンジョンに入った。
期待に胸を膨らませていたわけだが――
「な、なんで!?昨日は何度も現れたのに!」
宝箱が無い!慌てる俺を、フレアは落ち着いた声で止めた。
「絶対に出るものじゃないかも。条件があるのかもしれない。とりあえず奥まで行ってみよう」
ここで止まっていても仕方ない。狭い通路を無駄にキョロキョロしながら歩くが、何事も無く奥に辿り着いてしまった。
そこにはいつものスライム。お前は居るのな。容赦なく踏み潰した。
その瞬間、昨日のことを思い出す。
――最後は箱だけ開けて何も取らずに帰った。砂糖に興奮して途中で引き返したんだ。
フレアに話し、1度外に出て入り直すと今度はちゃんと箱があった。
「びっくりしたな。安心したよ」
「……いろいろ試してみようか」
実験開始。
まずは箱を開けて一度外に出る。戻ると、箱は消えて復活していなかった。
次にスライムを倒して再び中に入ると――ちゃんと復活していた。
さらに試す。フレアは出口の手前で待機。俺だけ出入りしても復活しない。スライムも湧き直さない。
なるほど、分かってきたぞ。
「多分ね。スライムを倒して、誰もいなくなったら“やり直し”されるんだと思う。報酬が少ない代わりに何度でも取れるってことかな」
誰もいなくなったらやり直し。だとすればここは一人用ってことになる。
勿論交代で周ることは出来るけど、村のみんなでは無理だ。冒険者を呼ぶなんてとても出来ない。
「便利なのは認める。でも……これだけじゃダメだよ」
「ダンジョンは成長することもあるって聞いたぞ。最初はしょぼくてもだんだんすごくなるかも」
フレアは小さく笑った。
「それでいいよ。今でもあたし達には便利なんだから、あんちゃんはそれで頑張ってみて。あたしは……畑仕事に戻るね」
「おう!任せとけ!」
フレアはそう言って先に家に戻った。
俺は明るく振る舞いつつも、心の片隅では嫌な気持ちが湧き出して止まらなかった。あんな顔をさせたかったんじゃない、笑わせてやりたい。でも……、この希望は、小さな実りで終わるかも知れない。
首を振ってダンジョンへ戻った。へこたれている暇なんて無い。
「もっともっと周るぞ!」
収穫が少ないなら数を回す。当たり前だよなぁ?
気合を入れてダッシュで周る!二倍の速度で走れば周回速度も二倍!収穫も二倍だ!
パンパンパン果物パン、果物果物パンパン塩、パン果物果物砂糖パン、果物パン砂糖パンパン。
ダンジョンの入口に収穫物を置いて、俺は汗だくでダッシュ周回をこなしていた。
足が重くなってもこの程度じゃ止まれない。両手に溢れるほど抱えて持って帰るんだ。
「まだ行ける……まだまだ……!」
走り続けで苦しい……んだが、なんか気持ちよくなってきたぞ?むしろ速度が上がってきた気がするぜ!
だがしかし、30回ほど往復したところで宝箱が出なくなった。
スライムは居る。倒して外に出てもスライムだけが復活している。
「これで……終わり?」
戦利品を見る。たったこれだ……いや意外と溜まってるな。
パン、果実、砂糖に塩も出た。塩は真っ白だったからわかりやすかった。
一日の収穫としては十分ではある。スライムは出ているからダンジョンじゃ無くなったとかじゃないだろう。
「……帰って畑仕事をやろう」
考えるのはフレアに任せた方がいい。
畑仕事に合流して、しばらくやってなかったので力仕事を中心に頑張った。俺が抜けている間は、何度か友達が手伝ってくれていたらしい。
フレアは感謝していたが、あいつの目当てはお前だぞ。俺も畑仕事を疎かに出来ないな。
そして夜、フレアに相談した。
「……それ、エネルギーを使い切ったんじゃない?」
「え?やばいか?」
「分からないけど、あのダンジョンはぎりぎりダンジョンとして成り立ってる感じだよね。だから魔物の数も増えないし宝箱も一個ずつが限界で、それすらも沢山は出せないのかも」
「じゃあスライムも倒し続けると不味いのかな」
「どうだろう?ダンジョンに詳しい人に聞けたらいいんだけどね。ダンジョンは人を呼び込む為に宝箱を用意しているらしいし、何かでエネルギーを補給していると思うんだけど」
「明日も行ってみるか」
というわけで翌朝。恐る恐る入ると――ちゃんと宝箱があった。
一日の回数に制限があるのか、それとも一時的なエネルギー切れか。
今日は回数をちゃんと数えながら周ってみた。
だがたった12周で打ち止め。昨日に比べたら断然に少ないってことは、1度枯渇してからエネルギーが戻ってないんだな。
どうやら、一時的なエネルギー切れで間違いないらしい。
このダンジョンは栄養不足なんだ。それが魔物も宝箱も少なすぎる理由。
もっと宝箱を開けたいなら、何かを“加える”必要がある。
加えずに減らし続けると何も出さなくなってしまう。
……なら、今まで俺が“減らしたもの”は、なんだ?
その答えは、もう分かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます