第2話 姉妹格差

深夜過ぎた頃に課題を終えたシシラはその瞬間に寝る。そして、朝早く起きる。遅寝早起きだ。



「シシラお嬢様、朝です。朝食の時間ですよ」


「……了解……」



ボブカットの濃い茶髪に普段は平凡でそばかすのある顔に眼鏡の侍女のアン・デッドが朝食の準備ができたことを知らせてくる。そして、部屋に入ってすぐにシシラが仕上げたアビスの分の課題を持って出ていく。



シシラは一人で支度した後すぐに食卓につくが、貴族令嬢のものとは思えない質素な食事だけが用意されていた。はっきり言って使用人と同程度のものだけ。そして一人で食べる。



「……いただきます」



両親と妹がいないのは、シシラのいる食卓が使用人に用意された食卓だからだ。当然、使用人たちと貴族の食事の時間はずれているためにシシラが使用人の食卓で食事するということは一人で食べることになるわけだ。



「……使用人の方々はどう思ってるんでしょうね」



アビスは姉シシラと一緒に食卓につくことを嫌う。見下している相手と対等に食べる気がしないのだろう。だからこそ、両親はそんなアビスの我儘を聞いてシシラのこの状況を作ったのだ。せめて、使用人と一緒の時間にできればよかったのかもしれないが両親はそこまで考えてはくれないようだった。



「ごちそうさま……」


「お嬢様……」


「お皿は洗います。お気になさらず」


「……はい」



自分の使った皿を洗う。そんな使用人の仕事すらシシラは自発的に行う。そんなシシラの状況を憐れむ使用人も多いが公爵夫妻や聖女の妹を恐れて迂闊に同情する言葉を口にできないし施しもできなかった。聖女のアビスに忖度する使用人もいることもあって、公爵家にシシラの味方はいないも同然なのだ。



「……皿洗いは終わり。学園に向かいます」



感情を無くしたような顔でシシラは学園に向かう準備を始める。そんな後ろ姿に、使用人の多くが掛ける言葉がなくても同情の視線を送るのだった。





学園に向かう馬車。シシラが利用するのは下級貴族のような質素な馬車だった。家名のプレートも無いため、下手をすれば貴族用か疑われそうだ。



質素なのは服装もそうだった。シシラは公爵家から与えられた服のみを着る。自分で買ったり、他家からもらったりすれば妹アビスに奪われるのだ。シシラが少しでもいい服を着ることをアビスが気に入らないらしい。



「いい服か……アビスの趣味は理解できないけどね」



その一方で、アビスは極端に派手なアピールをする。金ピカに飾り立ててこだわって造られた馬車で通学し、派手で綺麗な服装を好む。派手過ぎて若干惹かれがちだが、両親も公爵家の権威を見せつけるのだということで許容している。つまり、両親の趣味も悪いのだ。シシラは理解できないが。



「学園……アビスとクラスが違うことが唯一の救いね」



シシラとアビスのクラスは違う。姉妹ということで学年の違いもあるが、普通科と魔術科の違いで学園では滅多に顔合わせがないのだ。


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