変な人しか居ない めぇ
理想としては、友達は1人か2人。狭く深く、そんな関係が普通だ。高校の友だちとは一生の絆と成り得、就職しても、仮に自分に非があろうとも無条件に擁護し励ましてくれる。とても重要な存在。
そんな存在が居れば、これからも『普通』に生きて行ける。
「…………」
(いい友達、作ろ)
「じゃあホームルームを始めましょうか」
70は越えている老教師が、教壇の上に名簿を置いて始業を合図する。思ったよりも環境に適応出来ている自分に驚いていた。始まって数分後には机の上に肘を置いて頬を潰し、外を眺めていた。
自己紹介とか、学校説明とかそんな事も禄にせず、この日の連絡事項を終えると、教師はホームルームを終え、この日から始めて授業が始まる。
残念な事に、【光千里高等学校】 此処はそれほど高い偏差値を誇る学校ではない。どちらかと言えば、下から数えた方が早いくらいだ。
校則の緩さからか、既に机と机の間に明らかに学校生活に似つかわしくないヘアアイロンや、スマートフォンが鞄の上に置かれていたり、机の中は空っぽでゲーム機が詰まっていたり、やや治安の悪さが目立っていた。
当然、購買なんて場所に碌なものは置いて無くて、アニメや漫画特有の1個限定なんか凄いパンみたいなものも無い。安い菓子パンばかりだった。
「…………」
(明日からは何か買ってくるしか無いかな……。バイト探さなきゃ)
そんな昼休み。
「や…やめてください…」
「…………」
(また!?)
だがさっきとはものが違う。一人の女子生徒が、3人の女子生徒に囲まれて壁に追い詰められている。
「ウソでしょ……」
つい吐露してしまう。その声が、聞こえたらしい。金髪の少女。学年はスリッパの色で判断する事が出来る。捕まっている生徒のスリッパは緑。彼女もまた季節と同じく1年生らしい。取り囲んでいる二人は2年生。赤いスリッパがその証拠だ。
「いいじゃん。ちょっと付き合いなよ」
「此処で拒むんならさ。私らちょっと、酷い事しちゃうかもね」
「付いて来た方がさ。利口ってもんじゃん? ねぇ」
「ね」
「…………」
(治安悪いなぁ……)
小柄な少女は三人の影からほんの小さな隙間から視線を送る。
「助けて」という、心の中の声が漏れると、三人の視線が季節に向いた。
「あん?」
「なにこの子」
「友達?」
少女は季節にとてつもなく悪い笑みを向けて、「はい」と答えた。
ズッ…、三人の足先が季節に向く。
「へ?」
中でも最も大柄な女が季節の肩に肘を掛けて睨みつける。正面。どう考えてもカタギではなさそうな邪悪な目を持つ二人が正面から睨みつけた。
「あ……あの……?」
「ねぇ君、【ダンジョン】 入ったことある?」
季節はこの時、我慢はとうに越えていた。【暮山 季節】 何故彼女が大きな丸い眼鏡を掛けているのか、という話だ。
季節は眼鏡を外してやや俯く。そしてまず、自分の肩に肘を置く女に向けて首を回した。
「ちょっと重いな」
空気が一転する。つま先から、髪の毛の先端まで、身体のあらゆる毛根がギュッと締まり身体を締め付け逆立たせる。
一歩、また一歩と後ろに下がると女が転ぶ。
「ご……ごめん……」と、声を吐かせると、また次に、もう二人もまた、その眼力で突き刺した。
【暮山 季節】 彼女は、極めて目付きが悪い。
「どっか、行ってよ」
ビリビリと麻痺したその身体が伝える防衛本能は、確かに逃走経路のみを伝えている。コイツの目の前に居ては駄目だと。三人が舌打ち一つ、廊下の先に視線を向けて、退いた。
そして、もう一人。自分を売った者が居る。
階段の上に未だ佇むその少女を睨みつける。少女の足はガクガク震え、立てなくなるほどの眼力。
季節は鼻息を鳴らして、教室に向かった。
「ほんと。変な人しか居ない」
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