この人と友達にならない方が良い ワンッ
「助けてくれたんでしょ? どうもありがとう」
とても優しい笑みを讃えるポニーテールの女と半ば強引な握手を交わした。綺麗な人だ、というのが季節の第一印象だった。
「僕はレース」
「レース?」
「あ、名前ね。競う輪って書いて、レース。苗字は久里浜」
「……ああ」
「へへっ。変でしょ」
彼女は冒険者【
「そんな事は……」
という社交辞令は苦手だった。そしてそれは表情にも出ていて、彼女はまたヘラッと笑う。
「変だよー。いつまでも人の輪の中でも競い合って、誰にも負けないように、だってさ。アハハ」
だがとても朗らかな印象を持つ彼女に悪い印象は全く無かった。
「冒険者、なの?」
「うん。まぁね。これでも【Aランク】」
「お、凄い」
ランクとは、かなりシンプルに冒険者の強さを示すものだ。なんなら実績も然程関係は無く、筆記試験による武器の取扱と、実技による対人戦闘によってそれらを測る。この【Aランク】は、武器や流派にも勿論寄るが、警察剣道、柔道における選手権ではベスト16には食い込めるであろう実力者である事を意味している。
それを、まだ年端もいかない高校生が得るということは、並々ならな家柄の人物である事は確かだ。
「君、1年生?」
「あ、はい。【
「……さっきの奴ら、多分【口山校】の奴らだね。柄の悪い学校だよ」
「あ……で…れえす、さんは……」
「私はね。凄いよ」
人差し指を立てて見せ、自分の着るブレザーの襟に付いた【鷹】と書かれた金色のバッジを見せつける。
「え?」
「中卒。これコスプレ」
どうやら、彼女は少し、まともでは無いらしい。
「じゃあ、今は、何を……」
「高校生に紛れて、ちょっと高校生気分をね。あとコンビニで買い物をする途中だったの。あ、これね? 【イーグル&ホーク】って言うソシャゲに出てくる学校の制服なんだけど、もーイーグルとホークがカッコ良くって最高で、暗殺を題材にしたバディ物なんだけどさ。イーグルはホークの師匠であり親であり兄貴みたいなそんな繋がりがほんっと緻密に書かれてるのがもっもっ! ね!! この制服の学校、主人公のホークが通っている学校の制服ではあるんだけど、作中に女子キャラって出てこなくて、学校を舞台にすることって序盤だけだったんだけど、それを敢て女子生徒の制服で販売するなんてホントもう運営分かってるねって感じが! ね! もっ! ホークったらもう!! ね!」
「…………………………そっか。あ、時間」
「あ、そうだね。じゃあ、今日は本当にありがとう。何か困ったことがあったら、今度は僕が助けるよ。冒険者としてね」
「あまり、無理はしない方が良いと思うよ」
「うん。ありがとう」
季節は確信。志と言っても良い。
娘に競輪と名付ける両親とか、それが競輪だと気付いていないあたりだとか、中卒なところだとか、好きな事になると口が止まらなくなるところとか、自ら進んでトラブルに巻き込まれるところだとか。一人称が僕なところとか。
友達にならない方良い。
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