第2話 第二通
第二通
手紙を投函して数日後のこと、我が家の郵便受けに一通の手紙が入っていた。どこでも売っているありふれた封筒の宛名は、「則光へ」とだけあった。切手は貼られていない。
慌てて封筒を裏返すと「父より」とあった。
私は自室に戻ると、はやる心を抑えて封筒を開封した。
「則光へ
則光から手紙を貰うのは初めてだな。子供から手紙を貰うのは嬉しいような、こそばゆいような、そんな気持ちがするものなんだな。
俺も元気というのはおかしいかもしれないが、なんとかやっているよ。
そうか、則光もそんな歳になったか。でも、俺の時代と違って、まだまだ先のある年齢だ。
会社は定年退職になったのかな。三十年前はお前はよく働いていたからな、もしかしたらまだ働いているのかもしれないか。働き続けるのもいいが、ともかく悔いのない人生を送ってほしい。
それで、母さんのことだったな。母さんが姿を消した理由は俺も知らない、などとまだはぐらかし続けてはいけないな。
お前の推測の通り、母さんが姿を消した理由を俺は知っている。だけど、俺はお前たち兄弟にそれを伝えなかった。それが母さんと俺との約束だったからだ。
だから俺も『共犯』と言ってもいい。
その約束は今も有効だ。というか、母さんからもう理由を伝えてよいという許しが出なかったのだ。許しがなくてももうそろそろ伝えようかと思ったことは何度もあったが、そのたびに思い留まった。
信友と則光があの日の俺の年齢を超えたときが、話すタイミングだったのかもしれないな。
それを不可能にしてしまったのも、申し訳ないとしか言えない。
だから、母さんに手紙を書いてみてはくれないか。もしかしたら母さんの気が変っているかもしれない。
俺にはそれを確かめる術がないんだ。
ひとつだけ言っておく。母さんはお前たち兄弟を本当に愛していたし、俺との仲に何かがあったわけでもない。それだけは信じてほしい
父より」
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返ってくるはずがない手紙 結 励琉 @MayoiLove
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