第3話届いた一撃
その日も、私は負けた。
相手は、昨日までとは違う剣士だった。
構えが低く、動きが速い。
最初の一合で、
私は弾かれた。
腕がしびれる。
踏み込みが浅い。
分かっている。
分かっているのに、体が追いつかない。
次の瞬間、
肩に衝撃が走った。
痛みで視界が揺れる。
地面が近い。
――終わりだ。
そう思った、その一瞬。
私は、剣を引かなかった。
無理だと分かっていても、
前に出た。
踏み込む。
浅い。
それでも、止めない。
刃が、相手の腕をかすめた。
ほんの一瞬。
ほんの数センチ。
血が、落ちた。
周囲が、静かになる。
相手の目が、わずかに見開かれた。
「……今の」
誰かが、息をのんだ。
次の一撃で、
私はまた倒された。
勝敗は変わらない。
結果も同じだ。
それでも、
私は地面の上で、
小さく息を吐いた。
届いた。
確かに、届いた。
相手が強かっただけだ。
私が、何も出来なかったわけじゃない。
立ち上がると、
膝は笑っていた。
それでも、
胸の奥は、少しだけ軽かった。
今日の負けは、
昨日の負けとは違う。
そう思えた。
——勝てなくても、
前に出続ければ、
剣はいつか、何かに触れる。
私は、
その感触を、
忘れないように、
剣を握り直した。
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何度負けても、立っていたのは私だった なおや ゆかり @naoya06
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