第4話 てめえ、正気か!?
23面攻略後。おそらくこれが、最後の幕間になる。その前に、エミリとの関係を修復しなければ。俺は、周囲を見渡しエミリの姿を探る――居た。即座に駆け寄り、声をかける。
「よう、エミリ。少し話がしたいんだ」
「……何?」
「俺が、悪かった。あれは、出来心だったんだ本当はお前のことが――」
「出来心? どの口でそんなことを」
「……エミリ?」
「私ね。あなたが色んな子に手を出してたの、覚えてるの」
「え?」
じゃあ、まさか、エミリもずっと記憶を持ち越して……?
「あなたが他の子に手を出し始めたとき、仕方ないと思ったわ。何度続けても振り出しに戻されて、同じことの繰り返し。たまには火遊びも必要かと思って、見ないふりをしてきたわ。でも、今回のメイダ王女は――あなた、もし王子にバレてたらどうするつもりだったの? 軍の崩壊を招いてたわよ、きっと。あなただってタダじゃすまなかったわ。だから、私はあの日、慌ててプリン王子を誘ったわ。そして私も、彼と、寝た。これが真相よ」
頭を打たれた思いだった。
そうか。だからバレなかったのか。エミリにそこまでさせてしまった。俺は、取り返しのつかないことをしてしまった。その事実を突きつけられ、頭が真っ白になった。そこから先、何を話したかは覚えていない。だが、彼女は俺から去って行った。それだけは確かな事実だった。
最終戦が始まった。にもかかわらず、俺の心中は、エミリの件に支配されていた。彼女の口から明かされた真実。彼女はプリン王子と寝た。俺を、守るために。そして軍を、守るために。この、衝撃の事実を前に、俺は動揺していた。そのせいか、今日はいつになく体が重い。敵の攻撃を躱せない。幸い、ビティの回復魔法が即座に飛んできて、傷ついた俺を癒してくれる。そうだ。おれは見捨てられたわけじゃない。俺の活躍にプリン軍の未来がかかっている。その事実と責任感に心を奮い立たせ、ついに集中力を取り戻す。
次々に襲い掛かる強大な魔物たち。だが、ヤツらのブレスなど、今日の俺には通用しない。もう何体目か、無傷で10を超える数の魔物どもを屠ってきた。今日の俺は絶好調だ。この時の俺は、間違いなく最強の座にふさわしい、奇跡的な活躍を見せていた。その様子に、俺だけでなく、背後にいるプレイヤーにも油断が生まれたのだろう。敵陣深く切り込んだ俺に、危機が訪れる。今日の出来なら当たるはずのない、平凡な一撃を食らってしまった。その代償は大きく、次に一撃貰えば俺は即死。そんな窮地に一気に追い込まれてしまった。回復は? 間に合わない。絶望的な状況で、エミリの姿が視界に入る。こっちに向かってくる。まさか――止めろ! 今ならまだ間に合う。戻せ!――そんな俺の願いとは裏腹に、エミリは俺を背に、魔物との間に立ちふさがった。
「エミリ、どうして……」
「さあ、それはあの人に聞いてもらわないと。でも今日のあなた、格好良かったわよ。最近のあなたとは見違えて見えたわ。もう少し早く、その姿を取り戻してくれたら――でも、過ぎたことね」
「エミリ、俺は――」
――――――
それがエミリとの、最後の会話だった。あの後、エミリは魔物に4度襲われた。一度目、躱して反撃・撃破。二度目も躱して反撃・撃破。あと一回躱せば彼女は生き残れる、そう喜びかけたが、続く3,4度目の襲撃を立て続けにもらい、エミリはついに力尽きた。俺は、その様をただ茫然と眺めていた。だが、ふいに我に返った。リセットは? まだか? このプレイヤーは一貫して、死者が出るたびリセットしてきた。なら今回も――そう思った矢先にビティの回復が飛んでくる。まさか。俺の体が前へと進み始める。
『てめえ、正気か!?』
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