第3話 顔が良いの、ズルいわ

「委員長って、なんで委員長やってんの?」

 佐々木ひすいが船を漕ぎながら投げる質問。視線は天井。

 

「一番大きいのは、文化祭で飲食露店やれるようにしたいからだよ」

 

 俺を委員長と認知しているからには、演説の内容も聞いているとは思いながら投げ返す。この数年は『世情を鑑みて』というヤツで行われなかったことが多いらしい。〇〇が出来なくて残念ね、なんて、実感のない言葉を何度も聞いていた。初めから、そんなもの知らない、見たことない。だからその憐れみはお門違いだと思ってた。今は違う。憐れみは使わせてもらう。貰えるものは貰っておけば良い。

 

「え、なに、文化祭で店やれるの?」


 目を輝かせる佐々木翠。


「予算は取れてるから、GW明けから中間試験くらいで募集する予定」

 

 この大まかな告知だけしてある。1年生でも参加の目があるよう、正確な情報は4月中に掲示されるだろうが。


「にしても、文化祭には文化祭の委員長いるくない?なんで委員長が文化祭やるの?」

 もっともな疑問だ。生徒会と文化祭実行委員会は同格である。

「そっちの委員長とダブル委員長でやれば二倍動けるから。かなり脱法」

 人員だけでなく、衛生用品など消耗品予算を少しばかり、だが確実に脱法しながら回すことになる。

「脱法!?ワルいヤツだな!」

「一度止めちゃった風習は再開するの大変だって、先生方は説得したから問題ない」

「めっちゃ良いけど意外〜」

「おう。……意外って何?」

「お祭顔まつりがおじゃないじゃん」

「顔!?」

 

 思わず頬に右手が伸びる。平均的な骨格と肉、そこまで酷くニキビが出た訳でもなかった肌。刈り上げたもみあげはザリザリとする。


 つん、と反対の頬に突き刺さる指。

 

「や、見た目じゃないし。斜に構えてそうだからってコト」

 

 なんだとこの女。

 

「いいじゃんかよ、誰が祭ではしゃいでも」

「拗ねるな拗ねるな〜」

 

 人差し指を本当に人に刺しながらニヤニヤと……。

 

「楽しそうなこと、出来そうだから」

 

 頬が潰れてモゴモゴと答えるしかない俺を他所に、この女は左手を唇に当てた思案顔。

 

「アニメみたいな文化祭ってあるのかな」


 そう。アニメの中の高校生たちは、部活に命を懸けたり、実は格闘ゲームのアジアチャンピオンだったり、美少女を打ち消すレベルの問題児に振り回されたり。

 そういうのは無さそうだし、要らないけど。


 楽しそうなことに本気になってみたいのは本当で。


 楽しそうに微笑む横顔があるのならば。


「アニメより楽しくなるよ」


 そんな恥ずかしい言葉も今なら許されるだろう。


「うわ、委員長アニメキャラみたい」

「言わなきゃ良かったわ」

 

 許されなかったっぽい。その爆笑からは、顔を背けるしかない。


「頑張れ、委員長」


 振り向いた先には、蒼一色の窓を背に佐々木翠が立っていた。やや大きめのカーディガンの萌え袖とやらを後ろ手に組んで、ニカッと笑う佐々木翠に。


「おう」


 俺は真っ直ぐと、音を2つ。

 2つが、限界。

 顔が良いの、ズルいわ。

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隣のギャルが俺を狂わせる 義為 @ghithewriter

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