第3話 剣を持たない騎士

戦いの緊張がようやく抜け、二人はゆっくりと歩き出していた。






盾の少年「いやー、マジで危なかったな!」


少年が大盾を背中に担ぎながら、ケラケラと笑う。

その明るさにつられて、オリバーも微笑んだ。




オリバー「ほんとに……ありがとう。

僕、一人だったら絶対やられてたよ」



盾の少年「ははっ、俺も一人じゃキツかったぜ!

お互い助け合いってやつだな!」



盾の少年「そうだ、俺ガッツ! 騎士団養成学校の一年!」


オリバー「僕はオリバー。王立魔導学院の一年だよ」


ガッツ「魔導学院!?いいなー!魔法かー!」




オリバー「うん、少しだけね……。

親には禁止されてるけど、こっそり練習してるんだ」




ガッツ「へぇー!すげぇな!

俺なんか毎日盾の素振りしかしてねぇよ!」




オリバー「盾の素振りって…

ガッツは騎士だよね?剣とか使わないの?」




その瞬間、ガッツの笑顔がほんの少しだけ止まった。

しかし、すぐにいつもの調子で肩をすくめる。




ガッツ「ははっ、よく聞かれるんだよ、それ。

剣、持ってないんだ。いや——"持てない"んだ」



オリバー「持てない……?」



ガッツ「うん。生まれつき"呪い"のせいで、

どんな武器も手に取れないんだ。

 剣でも、槍でも、木の枝でも。

握ろうとした瞬間、バチッと弾かれちまう。

でも何故か体は人よりも何倍も丈夫で、

病気にもならないんだ」




オリバーは驚きながらも、真剣に耳を傾けていた。



ガッツ「本当は剣を握って勇敢に戦いたかった……。

けど、盾があれば誰かを守る騎士にはなれる。

だから毎日訓練してるんだ!」



ガッツは陽光に照らされた顔を少し赤くしながら笑った。


その笑顔には、自分の"できないこと"よりも"できること"を、

信じる強さがあった。





オリバー「……かっこいいね」




ガッツ「え?」


そんなことを言われると思っていなかったガッツは驚いていた。



オリバー「剣を持てなくても戦い続けるなんてさ。

 僕、今日ガッツに守ってもらったからわかるよ」



ガッツは一瞬だけ照れたように鼻を掻いた。


ガッツ「へへっ……そりゃ、ありがとな!」



ガッツ「オリバーだってかっこよかったぜ!

俺はあんな身のこなしもできねーし、

魔法も使えないからワクワクしたぜ!」



オリバー「そりゃ、ありがとう」


微笑みながら言った。



ガッツ「さて、落ち着いたことだしこの森を出るか!」


オリバー「うん、そうだね」


ガッツ「よかったら俺の宿舎でちょっと喋ろーぜ!

なんか友達ができたみたいで嬉しくってさ!

腹も減ったし途中でなんか買って帰るか!」



オリバーは少し驚いたが、嬉しそうに微笑んで言った。



オリバー「え!いいの!じゃあ行くよ!

まだ会ったばっかだけど僕も友達ができたみたいで嬉しいよ」



そうして2人は森での戦闘を回想し、親睦を深め合った。



この偶然とも言える出会いが、やがて必然となることを、

二人はまだ知らなかった。

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