第2話 初めての魔法、初めての危機
オリバーは街の外、魔物の出る森へと足を運んだ。
森の入口は穏やかだった。
オリバーは掌を見つめ、そっと息を吐く。
近くにいた小さな魔物が顔を上げた。
オリバーは軽い空気のうねりでその魔物を弾き飛ばした。
「やった……!」
魔法が楽しくていつの間にか、少しずつ奥へ、奥へ。
気がつけばいくつもの低い唸り声が響くようになっていた。
(しまった、来すぎた……)
完全に囲まれていた。
狼のような魔物たちが一斉に飛びかかる。
オリバーは風で補助をしながら身をひねり、なんとか避ける。
(一体や二体なら余裕だったのに…!)
風を操って攻撃を避け続ける。
けれど数が多い。
焦りと疲労で息が荒くなり、集中が乱れる。
しかし魔物はその隙を逃さなかった。
(だめだ、死ぬ——)
その瞬間、背後から気迫のこもった声が飛んだ。
???「危ねえっ! 間に合ったー!!」
ドンッ!と音を立てて、巨大な盾が魔物の牙を弾き飛ばした。
振り向いたオリバーの前に、少年が立っていた。
少年「おい! 大丈夫か!?」
オリバー「ぼ、僕は平気。君こそ大丈夫?」
少年「大丈夫だ! 俺は人より"丈夫"だからな!」
笑いながら大盾を構えるその姿は……異常だった。
武器を持っていない。
身の丈を超えるほどの大きな盾"だけ"を構えている。
それでも一歩も引かずに魔物たちの猛攻を受け止める。
盾の少年は盾をずらして衝撃を受け流す。
その隙を突いて、オリバーが風の刃を飛ばす。
魔物が一体、また一体と崩れていく。
少年「ナイス! その調子だ!」
オリバー「君もすごいよ!」
だが、余裕なんてなかった。
ただ生き延びるために、力を振り絞った。
やがて最後の魔物が地に伏す。
森の奥に、静けさが訪れた。
盾の少年は大盾を地面に立てかけ、息を吐く。
盾の少年「ふぅ……危なかったな!」
オリバーはその笑顔を見て、ようやく笑みを返した。
オリバー「本当に……ありがとう。助かったよ」
盾の少年「へへっ、お互い様だろ!
それより今のって魔法だよな!?すげーなお前!!」
オリバー「う、うん……練習してたんだ。
まだ上手くできないけど」
少年「いや、すげーよ!
風で魔物吹っ飛ばすなんて…!
かっけーな!」
笑い合う二人の間を、柔らかな風が通り抜けた。
オリバーの心に、初めて"仲間"の気配が灯る。
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