第4話 転機

次の日。


いつもの木陰でまた魔法科の屋外授業を見ていた。

しかし、何かいつもと様子が違う。


(もしかして喧嘩してる…?)



様子を見ていると先生が2人止めに入った。


1人は恐らく担任、

もう1人は衣服の荘厳さから偉い先生かと思ったが、

あれはどうみても子供だ。

でも、醸し出す雰囲気は紛れもなく偉大な魔術師だった。



オリバーは近くに行って、気配を消していた。



「こら!君たち何をしてるんだ!やめなさい!」

担任の先生が焦り気味に注意する。




「まあ子供の喧嘩なんだからやらせておきなよ」

と、子供の魔術師が言う。




担任「しかし、院長先生。

ケガでもしたらどうするんですか!

また親が怒って学院に来ますよ!」



オリバー(え…?院長?あの子供が…?)



院長「その時は僕が対処するよ。

だから多目にみてやってくれ」




担任の先生は聞こえなかったかのように生徒の方に行き小言を言い続けている。




生徒みんなが担任の先生と喧嘩をしている生徒に注目していると、


院長の背後にフードの男が現れた。




オリバー(あれは…!あの時の…!)



そしてフードの男が院長に声を掛ける。

「よお、リンクス…いや、院長センセ!久しぶりだな!」



院長「なんだ、アンタか。またそうやって急に現れるんだから」


フードの男「まあいいじゃねぇか。それより院長も大変だな。

下級生のケンカの仲裁に駆り出されたのかよ」




院長「まったくだよホント。これ僕いらなかったよね?」



何故かこの2人の会話は不思議だ。

フードの男と院長の間にはかなりの歳の差を感じるが、

凄く親しそうに会話をしている。




院長「いっそのこと、

このまま決闘でもして決めてくれればいいんだけどね」




フードの男「お!そりゃ名案だな!」


何かを閃いたようだ。


「学院内の魔法科全員学年問わず決闘大会ってのはどうだ!

この2人の決着もそうだが、

それぞれのクラスの成長や、

各先生達の教育の腕もそれではかれるだろ?」




院長「たしかに最近そういうのやってなかったもんね。

かなりアリだよ。てか決定だ。案内を出すよ」




オリバー(このフードの男は一体何者なんだ…?

何故院長にそこまで言える?)




フードの男「よし!決まりだ!

そこでだ、1つ俺からお願いがある」




院長「お願いって何…?

僕にできることにしてよ?頼むから!」


怯えるように院長は言う。



フードの男「だーいじょうぶだよ!

1人それに参加させたいヤツがいるんだ。しかしな…

ソイツはこの学院の普通科にいる生徒だから、

参加させられないんだ…。そこでだ!

院長権限で魔法科基礎クラスに編入させてくれ!

それで俺がエントリーさせる!」



院長「おいおい、院長を何だと思ってるんだよ。

まあできなくも無いけど…

これ後で色んな人に問い詰められるだろなぁ…」


フードの男「やってくれたらちゃんと礼はするって!」


院長「わかったよ。それで誰なの?ソイツは…」


フードの男「詳しいことは院長室で話そう」




そうして2人は空気に溶け込むように姿を消した。




(なんか不思議な光景だったな…。


それよりエントリーさせるソイツって誰だろう?)




オリバーはまたいつもの木陰に戻り、

手のひらで風の渦を作って遊びながら時間を潰した。


(たまには自分のクラスの授業でも受けるか…)


重い腰を上げ、ゆっくりと歩いて教室に向かっていた。



「よお、どこいくんだ?」


背後から突然声をかけられた。

フードの男がまたそこに立っていた。



オリバー「どこって…教室だよ。たまには授業受けないと」



フードの男「その教室にはもう戻らなくていい。

お前は今をもって魔法科基礎クラスに編入された。

お前の戻る教室はそっちじゃない」




オリバー「いや…え?編入ってそんな急に!?

基礎クラスとか教室とかわかんないよ!」



フードの男「お前、途中まで俺らの話聞いてたんだろ?

こっちに魔力注ぎすぎだ。

まあ必死に盗み聞こうとしてたんだろうが…

まあそういうことだ。

基礎クラスに編入と同時に学院決闘大会出場も決定した」




オリバー「え!あれ僕のことだったの!?てかバレてるし!

…魔法が学べるのは嬉しいけど親に怒られるよ…」






フードの男「お前の親は院長が説得する!

何なら国王も連れて行かせる!

それぐらいの気持ちでお前をエントリーさせたんだ」




オリバー「国王ってそりゃ無理じゃ…

それにエントリーしたって魔法科の生徒に勝てる自信なんてないよ…」




フードの男「お前なら大丈夫だ!俺が見込んだ男だ!」



オリバー「そんな都合のいい言葉で…」



フードの男「お前にちゃんと魔法を教えられるのは、

この国には俺しかいない。

それに俺が教えればお前なら優勝できる。

だからエントリーさせた。愛弟子としてな。」




オリバー「し、師匠!!…とはならないよ。

勝手なことばっかり。少しは考えさせてよ」




フードの男「まあ考えてもいいが決定事項だから、

とりあえず基礎クラスの教室に行きな」


そう言い残し、また空気に溶け込むように姿を消した。




オリバー「はあ…なんか凄いことになってきたな…」


オリバーはそう呟きながら、

急展開への不安と少しの期待を抱き、

基礎クラスへと向かうのであった。

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