小規模な同窓会 AI
――二〇二五年秋。
ついこの前までは灼熱のような暑さだったのに、夜になると風が冷たい。
わたしは二十五年ぶりに故郷の月見町へと帰って来た。しばらくぶりに、旧友たちと会うためだった。
みんなとよく遊びに来た駄菓子屋はとっくに無くなっていて、今ではオシャレなイタリア料理店になっている。先代のおばあちゃんが亡くなり、孫が新しく始めた店は人気店になっているようだった。仕方のないことなのに、どこか寂しくて切なくなる。
「あ……」
わたしの視界に懐かしい面影を持つ二人が映る。
あれから二十五年も経って、さすがに年を取った。だけど、それでも変わらないものが確かにある。
「
ちょっと泣きそうな顔でそう言うのは、まぎれもなくわたしの親友でもあった志穂ちゃんだった。
でも、しばらくぶりに会っただけなのに、そんなに泣きそうなんて大げさだな。あの頃から涙もろいのは変わってないのか。そう思うと安心した。
「ただいま」
なんて声をかけたらいいのかも分からないけど、とりあえず口をついて出たのはそんな言葉だった。
「ずいぶんと長い旅に出ていたんだな」
そう声をかけてきたのは
「おかげさまで」
そう答えながら、わたしは視線を左右に動かす。分かってはいたけど、やっぱり「彼」はいない。
何かの間違いでいいから、また会えれば良かったのに。
ありえないと分かっていながらも、そんなことを考えてしまう。うつむきそうになったところで、二人の視線を感じて我に返る。
「そう言えば、二人は結婚したんだっけ?」
「そうだよ。今のあたしは竹川志穂で~す。そして今は息子も十五歳」
「やめろよ、もういい年なんだから」
お酒も入っていないのにはしゃぐ志穂ちゃんを竹川君がたしなめる。なんだかこの感じ、懐かしい。あの頃から何も変わってない。
でも、二人は結婚しただけじゃなくて子供まで生まれてるんだよね。
十五歳か。あの時のわたしと同じ年。なんだかその響きは不思議で、同時に寂しくもある。二人の子供に会ってみたい気もするし、会いたくない気もする。
「まあ、こんな所で立ち話もなんだからさ、とりあえずお店にでも入ろうか」
竹川君にうながされて、わたし達はイタリア料理店に入っていく。扉を開けると、後ろで秋風が寂しそうに音を立てた。
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