魔物の棲む森
マリエルが教会を出て三日が過ぎた。
道中、チックが教えてくれた木の実や果物でお腹を満たし、澄んだ小川の水や草露で喉を潤した。
教会や城ではマリエルが居なくなったことで騒然としていた。捜索部隊が結成され、昼夜問わずに捜索が行われた。
高額な報奨金も設けられ、国全体で大勢のものが血眼になってマリエルを捜していた。
マリエルは有名人だ。すぐに見つかるかと思われていたが、すでに三日も経っている。焦りが見え始めていた
マリエルの治療を期待して、各国からの来賓からクレームが入り始めていた。高額の治療費を前払いで入金しているのに、一向に順番が回ってこないのだ。教会はマリエルの体調不良を理由に引き延ばしていたが、それも限界で苛立ちが見え始めていた。
「何としてもマリエルを探し出すのだ!」
大広間に国王、ラスター・グランドールの怒号が響き渡る。
その頃、マリエルはと言うと。
「わあっ!? ねえチック! ここは?」
『えっと⋯⋯あれれ? 道を間違えたかな? この森の中にお花畑なんか無かったはずなんだけど⋯⋯』
「でもすてきっ♪ 色とりどりのお花がこんなにたくさん! それに蝶々、リスさん、ウサギさん、小鳥さんが活き活きしていてるわね♪ なんて生命力にあふれた森かしら!」
つい先程までは、草木が鬱蒼と生い茂り、陰鬱な雰囲気が漂っていた。生き物などは物陰に隠れていたのか姿など見ることなどなかったのに、同じ森とは思えない、楽園のような
『うわっ!?』
「チック? どうしたの!?」
『マリエル、逃げるよっ!!』
チックが小さな手でマリエルの髪をぐいと引っ張る。
「えっ!?」
『いいから早くう!!』
マリエルは走った。
『こんなところにヘル・ボルゾイがいるなんて!!』
「え、あのワンちゃんのこと!?」
『ワンちゃんなんて可愛いもんじゃないよ! 一匹で小さな町くらい滅ぼせる魔物だよ! 見つかったら最後。絶対に逃げられな⋯⋯あれ?』
二人振り返るが、追いかけてくる様子はない。
「追ってこないね?」
それどころか、よく見ると、そこら中に魔物の姿が見える。しかし、そのどれもが攻撃的ではなく、自然に溶け込んでいる。
『トロルが倒れた木や大きな岩をどこかに運んでいる? それに、ゴブリンが残った樹木の世話をして育てているように見える。普通の動物と魔物が共生する楽園⋯⋯そんなの妖精の国でもありえない! どうなってんだよう!?』
「そうなの? でも、そんなのどーだっていいじゃない。逃げなくても大丈夫?」
『マリエルは世間知らずにもほどがある!』
「ねえチック、あれを見て?」
拓けた森の中央。大きな一本の樹があり、その下に祭壇のようなものがある。その周辺は、とくに綺麗な赤い花が咲き乱れていて、多くの動物や魔物が集まっている。
『あ⋯⋯あぁ⋯⋯そんな⋯⋯嘘だろう?』
「どうかした?」
『いや、そんなはずはない。こんなところに』
チックが祭壇を指差した。
『悪魔がいるなんて!?』
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