祝いの歌

たたみや

第1話

「どーもー、ラブソング糸川と」

「バラード東田で」

「「ラブソングバラードでーす! お願いしまーす!」」

「東田はん」

「どうしたんだ?」

「相手を祝福するような祝いの歌ってええなあと思いまして」

「そうだよなあ。いっぱいあるよなあ」

「乾杯! 今君は人生の 大きな大きな舞台に~立~ち」

「『乾杯』ね! これはもうお祝いの定番曲なんじゃないでしょうか」

「だいたいアルハラオヤジがカラオケで歌うんですけど」

「やめろてそんな言い方! そうとは限らないだろ!」

「ファンの世代考えたらそうなるでしょ!」

「偏見が過ぎるぞおい! 他にもさあ、祝いの曲っていっぱいあるだろ」

「Happy birthday to you! Happy birthday to you!」

「誕生日と言えばこの曲だよなあ!」

「東田はん。独身おっさんが一人部屋で寂しく誕生日を迎えることほどみじめなことはないんやで」

「やめろよそんな話! 急に悲しくなっちまったじゃねえか! 他にもあるだろ、祝いの曲ってのはさあ」

「瞳を閉じ~ればあな~たが~ まぶたの裏~にい~るよう~で」

「『3月9日』。この曲は卒業式でよく使われているよな。何てったって卒業も立派な祝いだからな」

「わては〇〇を卒業した時にこの曲が脳内に流れましてね」

「最低過ぎんだろそのカミングアウトなあ!」

「東田はん、人は様々な〇〇を卒業して大人になっていくんやて」

「やめろ! そうだとしても言うな! そうだ糸川、結婚式の定番曲いってくれよ。いっぱいあるだろうからさ」

「ひゃ~くね~ん さ~きも~ 愛を歌うよ~ 君は僕の全てさ~」

「『One Love』ね! この曲は結婚式にぴったりの曲だな」

「そう思うなら何で活動休止したんでっしゃろ?」

「言うなて! 俺たちにはどうしようも出来ないんだからさ!」

「共にあ~るき 共にさ~がし 共にわ~らい 共にち~かい」

「『永遠にともに』だなあ。この曲も結婚式でよく使われるイメージだ」

「これを結婚式で歌って離婚した芸人さんがいてるんですわあ」

「言うなよ! 当人も気にしてるんだからさあ!」

「あ~父さん母さ~ん あ~感謝してます~」

「『ハッピーサマーウェディング』! この曲も結婚式にはぴったりの曲だな」

「わてが、ラブソング糸川」

「お前とオンラインゲームきっかけで出会っても何にも嬉しくねえんだよ!」

「せやろか?」

「そうだよ! しょうもないおっさんと出会ってもさあ! それに、このタイミングでその話題出すな!」

「ゲームで思い出したんやけど、わてはお笑い界の恋愛RTAチャンピオンと呼ばれてまして」

「え、違うよ! お前ただの非モテじゃねえか!」

「Can you celebrate? Can you kiss me tonight? We will love long long time 永遠て言う 言葉なんて~ 知~らなかった~よね~」

「『CAN YOU CELEBRATE?』! 結婚と言えばこの曲だよなあ」

「東田はん、似合うでっしゃろか? わてのドレス姿」

「お前はタキシードを着ろ!」

「結婚の話ってのはええもんですなあ」

「そうだよなあ。おめでたいからなあ」

「ほんでわては、正月に芸能人の結婚報道のニュースを見てため息をつくんですわあ」

「全く祝う気ねえじゃねえか! どうも、ありがとうございました」



 ラブソングバラードの二人がネタを終え、会場は拍手と歓声に包まれた。

 新ネタに対する手ごたえを少なからず感じることが出来たようだ。

「東田はん」

「どうしたんだよ?」

「わてらっていつ祝われるんでっしゃろ?」

「さあな」

「誰か『生きてるなんておめでとう!』って祝ってくれへんかなあ……」

「そんなんで祝われても嬉しくねえだろ!」

 祝われる予定は今のところないものの、ラブソングバラードの二人はお笑いに邁進まいしんしていくのだった。

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祝いの歌 たたみや @tatamiya77

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