第2話 主人公は、なぜ選ばれるのか

主人公はしばしば、「特別な存在」として語られる。

才能を持ち、運命を背負い、大きな役割を与えられた人物。

しかし多くの物語を読み返してみると、

主人公が最初から特別である例は、むしろ少ない。


物語が主人公を選ぶ理由は、

その人物が優れているからではない。

物語が扱おうとする出来事や問題を、

一つの視点に集約する必要があるからである。


世界は本来、散漫で、同時に起こる無数の出来事から成り立っている。

そのすべてを等しく描こうとすれば、

読者はどこに立ってよいのかわからなくなる。

そこで物語は、

誰かを選び、その視線に世界を集める。


もっとも、物語が選ぶ主人公は、

必ずしも一人である必要はない。


たとえば青山美智子の作品には、

章ごとに主人公が入れ替わりながら、

物語全体として一つの世界が立ち上がっていくものがある。

そこでは複数の人物が語りの中心に立つが、

いずれの章においても、

読者が立つべき位置は明確に示されている。


それは主人公を放棄しているのではなく、

主人公という役割を、

場面ごとに丁寧に手渡しているにすぎない。


同じことは、私自身の作品についても言える。

主人公を固定せず、

視点を移動させることで物語に厚みを持たせてきたが、

それでも各場面には、

読者が引き受けるべき位置が必ず用意されている。


主人公が複数存在する物語とは、

主人公という役割が分散しているのではなく、

主人公という位置が移動している状態だと考えられる。


主人公とは、

世界を代表する人物ではない。

読者が世界を読むために、

仮に選ばれ、引き受けさせられた位置なのである。


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