第4話 サモン・モンスター!『ノミ・ポーダ』
無事、野良ダンジョンのクリーニングを完了した私たちは、最下層6階層目に居たダンジョンボスの大ムカデ【キルデ・ポーダ】を討伐して、ダンジョン・コアの破壊を完了した。
壊したダンジョン・コアをクリーニング完了の証として持ち帰り、ダンジョンの1階層目で待っている冒険者ギルドの職員たちの元に帰って来たところだ。
そして、
「サモン・モンスター!『ノミ・ポーダ』」
と、早速見つけたムカデの蟲魔獣、ポーダ種の最下位『ノミ・ポーダ』を私は召喚したのだ!
「はぁはぁ…っ、き、君、か、カワイイねぇ、はぁはぁ…、最下位はやっぱり、ち、ちっちゃくて、はぁはぁ…、きゃ、きゃわうぃぃ~~!!」
ポーダ種の最下位、ノミ・ポーダは、体調約30センチくらいの黒光りする身体に真っ赤な脚と、大きな牙を持ったムカデだ。
地球のムカデに比べたら凄く大きいけど、ついさっき中位種のキルデ・ポーダの大きさを見たせいか、手のひらに乗ってしまうその小ささがあまりにも可愛らしくって、私は息が荒くなってしまうのを止められない。
奇蟲を愛でる私の姿を、ギルドの職員たちは言葉にならない顔で見ていたけど、そんな視線はこちとら慣れたものです。
それに、ウィークの街のギルド職員さんたちは私が仕事中に新しい蟲を見つける度にこんな風に暴走するのをもう何度も見てる。
彼らも慣れたもので、しばらくしたら私も落ち着くのを知ってるのだ。
私が気が済むまで虫を愛でるのを静かに待ってくれてる。
ありがとう、職員さんたち。
うん? ひとり、ドン引きしてる若い子が居るけど気にしない。
「君の名前は何にしようねぇ?」
「チチチ?」
「そうだよ、君に私が名前をつけるんだよ。そうすることで、サモナーの私の召喚獣としていつでも一緒に居られるようになるんだよ」
「チチチチチチチチチ」
一緒に居られるという言葉に、ノミ・ポーダが嬉しそうに私の腕に巻き付いてくる。
んふふふっ、可愛いなぁ。
地球じゃ私がどんなに可愛いと感じても、虫の方からこんな風に甘えてきてくれるなんてなかったから、嬉しさに顔がニヨニヨとニヤけてしまうのを止められない。
「そうだなぁ、名前…、名前…」
「チチっチチ」
「チチ、チーチ」
私のすぐ横からゼノくんは『ゼッノ』にしようと言い、ハニーちゃんは『ハーニ』にしようと私に伝えてくる。
ふふっ、その名前じゃ君たちと被っちゃってるよ。
私の名付けを気に入ってくれて、同じような響きにしようよと言ってくれてるのが伝わってくる。
その気持は嬉しいけど、やっぱりみんなとは違う響きの方がいいかな。
「君の名前は、『トートくん』だよ。これからよろしくね、トートくん」
「チーチ! チーチ!」
トートと言う名前が気に入ったのか、何度も自分の名前を繰り返しながら、私の腕を登って首元に巻き付いて来る。
たくさんの脚がサワサワと私の首筋を撫でるのが少しくすぐったい。
私の首に巻き付くのが気に入ったのか、硬い頭で何度もすりすりと首筋に擦り寄ってくる。
「んぐぅ…っ! かわいいっ! 超甘えん坊じゃん…っ!」
地球に居た頃じゃあり得ない虫からのスキンシップと甘えっぷりに、私は膝から崩れ落ちるほど歓喜してしまった。
ギルド職員さんたちは、そんな私の様子にムカデの麻痺毒でも食らって立てなくなったのかと心配して駆け寄って来てくれたけど、私の赤面しただらしのない顔を見て、「あっ、いつもの虫好きのやつだ」と安心したみたいだ。
すいません。
この世界でムカデを見たのが初めてで、ちょっとまだ興奮気味なんです。
しばらくしたら落ち着くので、街に帰りましょう。
という訳で、私と冒険者ギルドの職員さん5人が洞窟の外に出てみると……。
「えっ!? えっ!? ダ、ダンジョンの入口の位置が変わってる…っ!?」
と、若い職員さんがキョロキョロと辺りを見渡してた。
「ダンジョンが崖の位置から落ちたんだよ」
「お、…落ちた?」
「ダンジョンは破壊される衝撃が大きすぎると地下に大きく沈んじゃう事があるんだ。今回は崖の上にできた入り口が、崖の下まで落ちちゃったんだ」
「な、なるほど…」
「だから、ミヤコさんのクリーニングでダンジョンを破壊する時は、彼女の指示に従って外に出るなと言われたら出ないようにな」
「は、はい!」
「けど、今回は地下まで沈まずに済んだので良かったです。まぁ、入り口が地下に埋まっても私の召喚獣たちが出口を作ってくれるんで問題ないですが」
私がそう言えば、ダンジョン・クリーニングに慣れた職員の皆さんも頷いた。
ここに居る職員さんたちは私に付き合って何度かダンジョンもろとも地下に埋まった経験がある。
ダンジョンは内側をいくら破壊しても、ダンジョン・コアが稼働してる限り大きく崩れ落ちてしまうような事はない。
コアを壊してしまえば、時間の経過とともに天井から崩れ落ちて行く。
だから、ダンジョンを壊す時は外で待機するよりダンジョンの1階層目あたりで待機している方が安全な事が多いんだよね。
まぁ、ダンジョンの入り口が地中に埋まってしまっても、私の召喚獣たちが地上までの入り口を作ったり、全員を外に運び出したりするからまったく問題はないよ。
若いギルド職員さんは、今回が初めての実地研修だったみたい。
慣れない内は驚くことが多いと思うけど、続けていればそのうち慣れるから。
……私の奇行にもね。
ゲテモノ召喚士と呼ばれますが私は幸せです! @tendon24
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