第8話 なまあたたかい親近感


「でよ、オレが聞いてるのはさ、どうやったら、そんなにも簡単に、オレたちの仲間なんて、なりすませるんだ?」

 無人のゲームセンターは、奥村一派の二男、ナノの手下と愛人で占拠されていた。

 愛人の女二人は、違法薬物を小瓶から摂取しており、地べたに座りながら明らかに両目がとんでいた。


 ナノのグループは少し特殊な構造をしている。奥村町長の長男、銀二と三男のチョッパーに武力では、到底に敵わないので、ナノは用心棒と呼ばれる少数精鋭を常に配置していた。

 さっきから、その用心棒がアメリカ国旗風のド派手な洋ランを着て、警戒するよう睨みつけていた。

 ナノは飼っているエリマキトカゲを撫でながら、格闘ゲームをやっている。

「分かるか? ん、俺らにもな、メンツって、ものがあんだよ。おい、お前、分かったら返事しろや」

 No.2の爆山が太った巨大を揺らしながら言った。

 

 この計画を練ったのは、タセンだ。俺は関係ない。早く解放される為、ただ、俺は目を誰とも合わさず、下を向いていた。

 既にタセンの顔面は、殴られたアザができていた。爆山なら、まだ、大人しく拷問をするだろう。俺とタセンが、一番、恐れているのは、平気で刃物をチラつかせる手下どもが参戦してくることだった。

 爆山のパンチが、また派手に命中して、タセンが吹っ飛んだ。

「まぁ、とりあえず、合コンに参加した、女二人の連絡先、置いてけや」

 爆山が厳かに言った。

 幸いにも、合コンは二人とも空で終わった。でも、そんなことを正直に言えば、もっと怖い脅迫が待っている。


「あーぁ、最終ステージの、こいつさ、なかなか倒せんのよ」

 ナノが心底、飽きたよう言った。

 ボスが発言したので、爆山は直立不動をした絶対服従の姿勢になった。

「なぁ、お前らにさ、ちょっとさ、相談があんだけどよ。オレたちもよ、派閥の名前とかが欲しいんだわ。分かるか?」

 かなり気分屋っぽい、ナノの発言はどこへ暴走し、何を引き起こすのか分からない。

 アメリカ風の洋ランを着た用心棒が、警戒の為、ゲームセンターの外へ出た。

「なぁなぁ、そうやって、黙ってたらさ、オレらも困るのよ。どうせ、藪木町でさ、オレはさ、天下人になるわけ。そんな時によ、カッコいい組織名とかさ、あったらさ、さらに畏怖してくれんじゃんか?」

 よくある話だろうけれども、何故、こんな肝心な話を俺たちにするのか、親近感を敢えて与えてくるのか、皆目、見当がつかなかった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る