第7話 そんなことより、セックスしようよ


 それでも、朝は新鮮な風を吹かしてくる。珍しく、涼しい陽気だった。

 繁華街はぼろぼろに疲れた風俗嬢や、カラ元気しか感じられないホスト、後は頑固そうに俯いた老人が散開するようだった。

行く場所も、帰る場所もない、そんな風に俺は思った。


「おはよ」

 霧子が、ようやく目を覚まして言った。

「昨日は悪かったな」

「一晩中、そばにいてくれたの?」

 俺は無言で返答をした。

「これから、どうする? 朝マックか」

「あー、ラーメンを食べそびれたよ」

 俺と霧子の間にあるのは、共通した虚しさだった。それはお互いのしたくてたまらなかった、性交を逃したことよりも、もっと大きな何かが覆い被さってくるような非力さだった。


「霧子はさ、何が不満?」

 霧子はエロい太腿をバタバタさせて、軽く伸びをした。

「んー、どうでもいい朝が不満」

「……文句ばっかりだな」

「そんなことより、セックスしようよ」

 俺もそうしたかったけれども、面倒な方向に傾いた。これ以上、そんな無力と向き合いたくもない。

「このまま、柔らかい布団に包まって、何もかも忘れて、現実逃避できたら、どんなにか幸せなのだろうね」

 俺はそうに違いないと思った。きっと、そんな現実逃避は甘美で仕方のないことだろう。酒池肉林と豪放磊落を闇鍋風に、ごった煮したぐらい、甘い誘惑だった。

「霧子、そんな悪いことを言うなよ」

 俺は無機質に言った。

「ちょっと、自動販売機とかコンビニでさ、レッドブルでも買ってきてよ」

 ワガママな自分をこいつは、魅力的だとでも勘違いしているんじゃないのだろうか?


「キャミソールって、寒くない?」

 俺がそう言うと、霧子は小難しそうな顔をした。

「……なんかね、どんどん露出が激しくなるよ。もう、私なんて、へそ出しはマストだね。そのうち、臍の緒まで、くっついてくるんじゃないのかな」

 鴉が居丈高に乾いた声でないた。そろそろ夏も終わろとしていた。いつでも、居心地の悪い俺は、霧子がどうしてもウザくて仕方なくなっていた。

 

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