第4話 本音の合コンぐらい虚しいものはない


 合コンは、もう既に白けていた。

 なんというか、マチコが不必要に目立っているし、だいたい場の雰囲気を支配している感が半端なさ過ぎる。

「とりあえず、お酒でも注文しない?」

 霧子が不機嫌そうに、尖った声で言った。すると、マチコはいきなり、店員を呼び出す鈴を迷わず押した。

「ちょっと、アンタ、いきなり何してんの!」

 マチコは無言で、今度はメニューを手に取った。いくらなんでも、自由奔放過ぎるマチコの力強い暴走を止める術もなく、俺たちは眼前で繰り広げられている、小競り合いを唖然と見守るしかなかった。

 小顔の店員が、慌てながらやってきて、うやうやしく跪いた。

「もう、いい。注文しよ」

 霧子は本当に不機嫌になったようだった。

 メニューの梅カクテルを指さし、注文をアピールするマチコを尻目に、それぞれ俺たちはアルコールの注文を店員に伝えた。

 

 実は、俺は結構なんだけども冷静だった。初体験の念願を遂げるには、霧子ぐらい淫乱そうで、後腐れなく、しかもエロい、こういう相手が丁度よいのかもしれない。

 店員さんがメンバーのアルコールを、忙しそうに持ってきて、俺たちは間の抜けた乾杯をした。

 今の時代、誰でも合コンなんて場で、気まずい時に披露する、話題のネタは懐中に忍ばせているのかもしれない。それは、きっと、神様が与えてくれた、自分らしさという一つの確信だと思う。


 タセンは俺の聞き飽きている、そのネタを早速に披露した。

「鉄板って、激アツじゃない?」

 霧子はきょとんとした。マチコに至っては、どこから持ってきたのか分からない熱燗を、既にちびちび飲んでいる。

「どういうこと?」

 やや、エロくなった眼(まなこ)で霧子は言った。ひっそりと俺は確信した。こいつこそ、この俺の腐った初体験に相応しい。きっと、こういう部分って、一度決めてしまえば、後は猪突猛進しかないのだろうな。

「要するにさ、造語って、いとも簡単に滅びるよね。なんの深い意味も宿らない」

「ふーん、そういうものか」

 霧子は梅チューハイをごくりと飲んだ。

 タセンは上機嫌になっていた。この話を聞かされる度、俺は何時も不愉快でしかなくなる。

「それ、ガチで草はえたわ」

 また、タセンが独り言のよう言った。

「あぁ、ガチは流行ったね」

 霧子は言った。

「ワンチャンさ、俺たちなんてさ、組織で下っ端でしかないのよ。あれってさ、結構、全員が虚しいを誤魔化すとかさ、悲しめないとかさ、そういった裏ワザを発掘するたびにさ、物凄く激しい勢いで、喧嘩が起こるんだわ」

 堂々の組織の構成員を名乗るタセンに、俺は異和感を感じていた。この異和感を感じるたび、その過ぎていく様を呆然と見過ごすたび、俺は何かを裏切っていくような後ろ姿をみせられている気がする。

「霧子って、実は優しいでしょ」

 気が付いたら、爆発するような鈍い感触を伴って、俺は爆弾発言をしていた。

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