放課後ピアノクイズ(推理編③)

 迷わず③の狭間さんを選んでいた山田。彼は小さく頷いてから理由を語り始める。


「宗太郎とかける。二人とも逆茂木さんと堀さんを選ぶために理由をこじつけているようにしか見えないんだよねぇ。。シンプルにこう考えるべきだと思うんだよねぇ。石垣さんは実力的に論外だし、こうなると狭間さんしか答えはありえないんだよねぇ」


「狭間さんだって実力的には厳しいんじゃないのかな? それに彼女だってクラシックしか弾かないでしょ?」


かけるは考慮が足りてないねぇ。彼女は逆茂木さんみたいに『クラシックしか弾いてはいけない』という制約があるわけじゃなくて、自主的にクラシックの曲を選んで弾いているというだけなんだよねぇ。他ジャンルの曲だって弾けるのかもしれないし、実力的に厳しいかどうかは見る目のない俺たちが判断すべきじゃないと思うしねぇ……まあ、さすがに石垣さんは厳しいと思うけど」


「山田も結局のところ想像に頼っているよね。ボクは狭間さんにあの曲は弾けないと思っているけど……さて、最後はマロンちゃんの番だね。なにか言い残すことある?」


 僕だけがすでに敗者認定を受けていた。しかし僕だってなんの勝算もなく石垣さんを選んだわけじゃない。決して『罰ゲームで告白させられるなら、一番好きな石垣さんを選ぼう』という理由だけで彼女を選んだわけじゃないのである。



***



 僕が④の石垣さんを選んだ理由を説明する。


「放課後のピアノ。一人ずつ弾いていると決めつける理由はないよね。。石垣さんだって、逆茂木さんとかに手伝ってもらえば弾けるんじゃないのかな」


「…………」


 連弾の可能性を考えていなかったであろう──名推理を披露したばかりの三人が黙ってしまう。僕も石垣さんを選んでいなければ、こんな理由を思いつくことはできなかった──要するにこじつけの理由であるが、結果としては良い答えになったと思う。


「連弾の発想はなかったな……だからといって石垣が弾いている理由にもならないが。しかし可能性というラインにまで乗せてきたのは立派なものだ」


 宗太郎と山田がうんうんと頷いている。一方、かけるはまた不安になってきてしまったのか、少し青ざめながらノートに書かれた女子たちの名前をじっと見つめている。

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