放課後ピアノクイズ(推理編②)

 推理の前に先に演奏を聴くべきだと主張したのは宗太郎である。それもそのはずで、かけると山田は放課後に流れる『残酷な天使のテーゼ』の演奏によく耳を傾けていたが、僕と宗太郎は「そういえば聞こえていたかな」くらいの認識なのである。


 かけるの情報によると、今日は逆茂木たちの演奏を聴けるかもしれない日。というわけで僕たちは図書室を出て、音楽室のある五階に向かった。



***



 そして五階に到着し(音楽室に突入するわけにもいかないので廊下をうろうろしながら)彼女たちの演奏を──目的の曲を含めて聴いた。


「うーん、これかなぁ」


 その後、山田が聴いたものと同じアレンジの演奏を動画サイトで見つける。極上ピアニッシモというピアノ月間誌に載っていたピアノアレンジらしいが──よく聴き分けられるものだと感心する。


「有名な動画配信者が都庁ピアノでやるみたいな派手なものじゃないし、超高難度というわけじゃないと思うねぇ。ただどのくらいのレベルなのかは素人目には分からないねぇ」


「とりあえず逆茂木じゃないと弾けそうもない……なんてことがないのは分かった。あとは検討範囲スコープをどこまで広げるかだな」


 宗太郎が呟く。情報の不平等アンフェアがなくなったところで、いよいよ推理ゲームのスタートである。



***



 図書室に戻ってきた僕たちは、答えを紙に書いて一斉に見せ合った。その結果、幸いというべきか──なんと全員が違う答えとなった。


 ①の逆茂木さんを選んだのは宗太郎。実力的には彼女が最有力候補であるし、もし外しても『告白して振られても悔いのない相手』を選んだと思われる。


「逆茂木さんはクラシック以外の練習を禁止されているんだよね?」


「その通りだな、マロンちゃん。彼女はクラシック曲以外を禁止されている。だからアニソンのピアノアレンジなんて弾くわけがない──だけど逆茂木を選ばない理由というのはこれくらいのものだし、反対にこう考えることだってできる。。親に内緒で弾いている可能性は否定できない」


「なるほど、宗太郎もそこに目をつけたんだね。でもその論理には大きな欠陥があるんだよ」


「ほう、じゃあかけるはどう考える?」


「学校でしか弾けないのだから、限られた時間の中で演奏しているわけだよね。だとすると。逆茂木さんなら新曲をマスターするのも早いと思うし、『残酷な天使のテーゼ』ばかりを毎回のように弾いている理由が分からない」


「…………」


 さすがはミステリーオタク。宗太郎を理屈で黙らせてしまった。



***



 ②の堀さんを選んだのはかける。彼は自信満々で理由を語り始めた。


「彼女は最近の曲しか弾かないと言うけれど、本当は昔の曲だって好きなんだと思う。でもボクたちの前では弾かないんだ。たぶん──オバサン趣味だと思われるのが恥ずかしいから」


「さっきかけるが俺に言ったことと同じことを訊くが、いつも『残酷な天使のテーゼ』を弾くのは何故なんだ? 逆茂木と同じくそれは不自然なことなんじゃないのか?」


「同じじゃないよ。何故なら堀さんの実力は逆茂木さんに劣るから。いろんな曲を弾くためには短期間でたくさんの曲を覚える必要があるけど、彼女にそこまでの技量はないんじゃないのかな。ボクたちの前で弾いている最近の曲だって練習しているわけだし」


「それにしたって不自然なところがあるだろ──まあでも逆茂木を選ばないのなら、消去法で堀しか残らないという考えもあるな。さて……次は山田の番か」

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