第3話 自己紹介
特に波乱もなく入学式が終わり、教室に戻ってくる。
すると、先程まではいなかった銀髪ロングの女子生徒が、教室の一番前の端の席に座っていた。
(常陸院さん、か……同じクラスだったんだな。っていうか、
ゲーム『フォーシーズンズ』で名前のみが登場する学年首席、スポーツ万能、容姿端麗、品行方正で、さらには名家かつ地元に傘下企業がたくさんある大企業のご令嬢という非の打ち所がない女子生徒。
陰で呼ばれていたあだ名は『完璧お嬢様』だ。
(ゲームやってた時は『名前しか出てこないのに設定盛りすぎだろ……』って思ってたけどさぁ。しっかし、こうして改めて見ると、立ちグラがなかったことがホントに悔やまれるなぁ。立ちグラがあったら絶対に人気ランキング上位に食い込むだろ)
咲月を眺めて、そんなことを考えているとさっきのスーツの女性が入ってきた。
「皆さん、入学式お疲れ様でした。そして改めて入学おめでとうございます。私はこのクラスの担任の高梨京子です。担当教科は社会科です。三年間、よろしくお願いしますね」
暦乃宮学園は三年間クラス替えがない。
なので三年間、ここにいるクラスメイトたちと一緒の教室で学園生活を過ごすことになるのだ。
「さぁ、次は皆さんの自己紹介の番ですね。自己紹介の順番は無難に出席番号順でお願いします」
こうして自己紹介が始まった。
「
ゲーム『フォーシーズンズ』のヒロインの一人、秋海綾子。
ゆるふわギャルで親密度が上がるとボディータッチが激しくなり、信司をドキドキさせる小悪魔系女子だ。
(実は結構、勉強もできるんだよな。『勉強ができるギャル』っていいよね、って一時期ネットで騒がれていたっけ……)
金髪のふわふわセミロングにボンキュッボンなグラマー体型は、クラスの男子たちの視線をしっかりと集めている。
だが本人は気にせずに自己紹介を終えて、スッと席に座った。
(見られ慣れてるって感じなんだろうなぁ)
視線を気にかけない様子の秋海綾子に陽介が関心していると、クラスメイトたちの自己紹介はどんどん続いていく。
「四季信司です。好きなことはゲームです。オンラインゲームとか一緒にやってもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」
主人公は無難な挨拶だった。
(さすがは古きよきエロゲ主人公……これからの伸び代しかないな)
陽介がそんなことを考えていると、ガタンッと椅子が動く音が聞こえて、そちらに視線を向ける。
すると一人の女子生徒が勢いよく立ち上がったところだった。
「夏川奈々ですっ。好きなことは走ることで、陸上部に入るつもりです! 皆と仲良くしたいと思っているのでよろしくねっ」
その女子生徒はこれまたヒロインの一人。
明るく元気っ子で陸上部の短距離走選手だ。
赤髪をポニーテールに結っていて、健康的なうなじが惜しげもなく晒されている。
やはりクラスの男子たちの視線を集めていた。
「春山
信司の幼馴染で、彼女もヒロインの一人だ。
ゲームでは毎日、信司を起こしに来て弁当まで用意してくれるという、まさに古典的なエロゲの王道幼馴染ヒロインだ。
(ステータスを上げなくてもルートに入れるチョロインなんだよなぁ……)
ペコリとお辞儀をした時に、茶髪のセミボブヘアが小さくなびき、胸部がプルンッと大きく揺れた。クラス男子の視線は釘付けになっていた。
その後も、次々とクラスメイトたちが自己紹介をしていく。
そして――
「
上品にお辞儀をするとサラサラと長い銀髪が日差しを反射し光り輝き、男子だけでなく女子までもが魅入ってしまっていた。
それは陽介も例外ではない。
(いや、ホントになんでヒロインじゃなかったんだよ……)
小柄な美少女なのに制服越しからでもわかるほど、出るところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる。
いわゆるトランジスタグラマーな体型だ。
そんな魅力的な身体つきをしているのだが、咲月の纏っている神秘的な雰囲気が、彼女を下品な視線で見ることを躊躇させていた。
「
端的にポツポツ話して、冬谷文華はすぐに座る。彼女もヒロインの一人。
黒髪ロングでロリ体型。ややジト目で少し眠そうに見える。
(主人公と仲良くなると、ボソッとツッコミを入れてくるようになるんだよなぁ……。しかし、髪色が鮮やかなこの世界だと、黒髪は落ち着くわ)
黒髪はクラスでも五人ほどしかいない。
そのうちの一人が冬谷文華で、もう一人が信司である。
「星崎陽介です。好きなことは読書とゲーム。最近ハマっているのは筋トレです。三年間よろしくお願いします」
陽介の自己紹介は、信司のことを言えないくらい無難なものだった。
クラス全員の自己紹介が終わり、明日からの予定を担任の高梨先生が話し始める。
「明日はオリエンテーションです。学園の施設案内がメインになります。その後、教室に戻ってきて委員会決めのホームルームです。委員会決めが終わったら終了になりますので、今日のうちに委員会に入りたいと思っている人は考えておいてくださいね」
高梨先生が教室から出ていくと、クラス内の雰囲気が弛緩する。
クラスメイトたちは自分の席の周りの人たちと話していたり、黙々と帰り支度をしている人がいたりと、思い思いに過ごしていた。
四季以外にまだ学園内に知り合いがいない陽介は、粛々とプリントをスクールバッグに詰めて帰り支度をする。
チラッと隣の席を見ると、信司の元に葉瑠香と奈々がやって来ていた。
「ねぇねぇっ、二人とも! どこか寄って帰ろうよっ!」
「う~ん、ハンバーガーとポテト?」
「そうそうっ! ね、信司もいいでしょ?」
「うん、いいよ」
三人は仲良く放課後にハンバーガー屋に行くようだ。
その光景を見て、陽介は内心で両手を合わせる。
(うん、四季信司。尊い光景をありがとう……! これからもヒロインたちとの仲のいいやり取りを俺に見せつけてくれっ!)
そんな比較的、気持ち悪いことを考えていると――
「あ、星崎くん。また明日ね」
「お、おうっ、また明日な。四季たちも気をつけて帰れよ」
互いに軽く手を上げて、別れの挨拶をする。
そして、
(いや~四季、普通にいい奴だわ)
三人を見送った陽介も帰り支度を済ませ、家路についたのだった。
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