××警察署に残された緊急通報の音声記録

 これは××警察署にかかってきた、一本の電話の音声記録である。


『もしもし、事件ですか、事故ですか?』

『あの! 父が、い、いなくなったんです!』

『落ち着いてください。ご自宅はどちらですか?』

『××町〇〇-〇〇です。速く来てください! 大変なんです!』

『わかりました。一度、深呼吸してみましょうか』

『それどころじゃないんです! 父は銃を持ってるかもしれないんです!』

『銃? いったいどういうことですか?』

『父は猟師なんです! 島田史彦! 知ってるでしょ!? 父が銃と一緒に姿を消したの!』

『……わかりました。すぐに警官を派遣します。それと、本件の担当である本村警部補に取り次がせていただきますね』

(女性の荒い呼吸だけが響く)

『お電話代わりました、本村です。島田凛子しまだりんこさんで間違いありませんか?』

『そうです、あの、警察はまだつかないんですか?』

『今日はかなりの悪天候ですので、もうしばらくかかると思われます。ですので、今のうちにお父様の情報をなるべくお伝えいただけますか?』

『……わかりました。あの一件以来、父は元気がなかったのですが、最近はなんだか様子が変で……』

『お父様はどういったご様子でしたか?』

『……転んで足を切ったことがあったんです。切ったって言っても、ちょっとした切り傷ですよ? なのに、そこを見つめて叫び出すんです』

『……血が怖かったのでは?』

『そんなわけありません! だって父は猟師ですよ? 血なんて見慣れてます!』

『確かに、失念しておりました。すいません。では、お父様が行きそうな場所に心当たりは?』

『そんなものありません! ……昔から山が好きな人でしたが、最近は山を見るのも嫌なようでしたので』

(サイレンがなる)

『……これまでのことを整理します。お父様は銃を持っている可能性がある、場所に心当たりはない、怪我が怖い、山が嫌、こんなところでしょうか』

『……はい、そうですね』

『では、このことを到着した警察に伝えたください』

『……わかりました、ありがとうございます』

『いえ、善良な市民の味方をするのが我々の仕事です。今から私も捜索に参加しますので、安心して連絡をお待ちください』

『……ありがとうございます』

(電話が切れる)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る