葉村昌紀の研究メモ

 本村警部補の連絡を受けた彼の部下が山小屋内を探索すると、葉村昌紀の私物である鞄が発見された。そこから彼のパソコン、カメラ、メモ帳が見つかった。パソコンは現在パスワードの解析中である。カメラは破損したデータを復旧中であり、現在確認できるのは彼のメモ帳、そのたった一ページだけである。以下、その内容である。


 花蔵教授の論文は未完成だ。それがなぜかはわからない。ただそんな気がするのだ。そして、これを読んだ中学のあの日から、俺は取り憑かれたようにこの道へ歩み出した。彼の論文は俺が完成させる、醜い欲望にも似たこの決意を持って。と言っても、俺には何のプランも存在しない。あてもなくインターネットの海を漂っていたそのとき、俺はある昔話を見つけた。

 なんてことないありふれた話だった。この道に進めば嫌というほど目にするような、噛んでも味のしない物語。それでもこの話が俺の目を引くのは、まさに花蔵遼太郎の故郷に起きた現象と一緒だったからだ。神域、呪い、宮司の一族、笑っちまうような偶然だ。いや、必然だったのかもな。

 俺はすぐに荷物をまとめた。A県××町、××神社、この場所にあの論文の、最後のピースが眠っている。

(この前後は破り捨てられている)

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