花蔵遼太郎の論文
これは民俗学教授、
まず第一に、私は離島の出身である。名前を挙げたとて、ほとんどの者が「どこの島?」と首を傾げるような田舎の生まれである。そこにはある一つの慣習が存在した。それが(消去済み)信仰である。
(消去済み)信仰は、私の生まれた〇〇島特有の文化であり、忌むべき因習だ。その正体は〇〇島でしか見られない風土病を呪いだと勘違いした島民による、大量虐殺の歴史だ。
(中略)
当該地域には(削除済み)と呼ばれる神が存在し、その御前である社には宮司の一族以外は近づいてはならないという規則がある。この禁を破った者は体にカビのようなものが繁茂し、やがて死に至る。その正体は未だ解明されておらず、社の立地の悪さから調査も難航している、というのが現状である。
ではなぜ、この病を島民が呪いだと誤認したのか、それはこのカビの持つ"宮司の一族にのみ効果が現れない"という神性に隠されている。宮司、すなわち神を崇拝する者のみかからないということは、病は神罰であり、呪いであると見られても、なんらおかしいことではない。現代においてもほとんど誰も知らぬような隔絶された島である、それをおかしいと思うことなどあり得ないだろう。
この事象において着目すべき部分は、いかにして病が呪いへと転じたか、という点である。前述の神性がその大きな一因だと思われるが、他にももう一つ大きな原因が存在する。(削除済み)という神の存在だ。
隔絶された地域においてたった一人の指導者の存在は大きなものである。それが人智を超えた存在ならなおさらだ。だが、これは私の思想であるが、あの島に神など存在しない。神などとは程遠い、紛い物の醜い存在でしかない、と私は主張する。
(削除済み)が島の指導者であるとしたとき、一番得をするのは誰だろうか。島民か? 移住者か? その答えはたった一つ、宮司の一族である。土地の神性にあやかり、全てを神の思し召しだとして自らの私腹を肥やすことができる宮司が、呪いが呪いたる要因である。この宮司の一族は元を辿ればただの酒屋である。神性などとは程遠い。そんな人間の醜い想いのためだけに神は、呪いは、存在しているのである。
これが隔絶された地域における呪いと病の正体であると私は考える。
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