本村太陽警部補の日記

 以下の文章は××警察署所属、本村太陽警部補の日記である。一部、捜査に関する記述があるが、彼の主観で書かれており、説得力に欠ける内容である。


 八月十八日、死体を発見したとの通報を受けた。現場には既に後輩が待機しており、ご遺体は回収済みだった。だが、後輩の顔色がとても悪い。いったい、どんなに酷い状況だったのだろうか。

 八月十九日、第一発見者である島田史彦との調書を行った。本来なら現場に居合わせた後輩も同席させるつもりだったが、今にも倒れそうな青白い顔の男に、仕事をしろと言うのは気が引けた。島田の話を聞いてみたが、どうにも様子がおかしい。彼はいったい何を見たんだ? それについて聞きたかったが、まさか倒れるとは思わなかった。ひとまず、彼の回復を待つべきだ。

 八月二十日、司法解剖の結果が送られてきた。毒物は検出されず、殺されたわけでもない。だが、事件性はある、と。いったいどういうことだろうか。

 八月二十一日、顔貌復元の結果を持って、聞き込み捜査を行ったが、たいして結果は得られなかった。明日はもっと人通りの多いところへ行こう。

 八月二十二日、後輩から体調が優れず、しばらく休みたいとの連絡を受けた。今日もたいした結果が出ず、猫の手も借りたい状況だと言うのに。まあ、体調不良なのは仕方がない。今度お見舞いにでも行ってやるとするか。

 八月二十三日、遂に情報が手に入った! 高校生の証言で、記憶も曖昧のようだが、それでも大きな手がかりである。この情報を春山に送り、身元の特定を急いでもらおう。

 八月二十四日、後輩のお見舞いにやって来た。体質の問題か、薬があまり効かないらしい。デパートで買ったフルーツの詰め合わせをあげたら、ニコニコしていた。単純なやつだ。

 八月二十五日、あれから、捜査にあまり進展がない。大学生らしい、という以外に情報がないのがよくないのだろうか。更なる情報を集めるため、マスコミに頼るのも視野に入れるべきだろうか。

 八月二十六日、休みをもらえたから娘といっしょにウォーターパークへ出かけた。久しぶりにゆっくりできた気がする。

 八月二十七日、娘が風邪をひいてしまった。病院も混雑しており、市販薬も品切れが続いているらしい。娘の通う小学校から学校だよりが届いたのだが、やはり体調不良者が増えているようだ。何事もないと良いのだが。

 八月二十八日、春山の調査により、ご遺体の身元が特定された。葉村昌紀、私はこの名前に聞き覚えがある。どこで聞いたのだろうか、どこで目にしたのだろうか、調査が必要だ。

 八月二十九日、交番に島田の娘が来ているとの連絡を受けて向かったというのに、犬がいなくなっただけだという。そんなことのためだけにいちいち連絡しないでほしいものだ。

 八月三十日、春山から電話がきた。どうにも様子がおかしい。部下たちに取り次いだ直後に気がついたのだが、彼女はいったいどうやって電話をかけているのだろうか。言葉に嘘があるようには見えなかった。それだけに、不気味だ。明日は山の中を念入りに捜査しなくては。

 八月三十一日、マスコミに報道してもらい、注意喚起と情報提供を求めること、二つを同時に行う。少しでも結果が出れば良いが……。そして、山の捜査では春山の姿を発見することができなかった。だが、彼女のいたと言う山小屋から葉村の私物が発見された。その調査と並行して一刻も早く春山を見つけなくては。電話口ではああ言ったが、彼女もこの捜査において必要不可欠な仲間であることに変わりはない。どうか、無事でいてほしい。

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